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カナダでのリタイアメント: Registered Retirement Income Fund (RRIF)

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

RRIFとは

Registered Retirement Income Fund (RRIF) とは、リタイア後のために貯蓄/運用してきたRRSP (Registered Retirement Savings Plan) の資金を、リタイア後の収入として活用するために利用される制度です。リタイアをする (RRSPから資金を収入として引き出し始める) と決めた時点で、RRSPからRRIFへとその資金を「変換」することでRRIFを「開設」することとなり、RRIFのルールに基づき税制の優遇を受けながら効率的な資金の引き出し/取り崩しを行うことが出来ます。
一般的なシナリオを例に挙げつつ、手順を追って理解していきましょう。

1. 「RRSP」から「RRIF」への変換

「RRSPから資金を収入として引き出し始める」と決めた時点においてまず行うことは、その資金を「RRSP」から「RRIF」に「変換」させることです。これは、RRSPを保持している金融機関に対しその旨を伝えることだけで実行することが出来ます。
あえて「変換」という言葉が使われるのには理由があります。この「変換」とはまさにただその「箱の名前を換える」だけの手続き。資金を実際に移動させることもなければ、投資内容を変更する必要も (つまり売却や利益確定をする必要も) ありません。
また、この「変換」はいつでも行うことが出来ます。唯一のルールは「71歳の誕生日を迎えるその年の終わりまでに RRSP内の資金からの『変換』を完了しなければけない」ということだけ。

2. 「RRIF」からの引き出し

RRIFへと変換された資金は、自由な頻度で引き出しを行うことを設定できます。ここで言う「引き出し」とは、RRIFの口座から例えばChequing口座に資金を移動させること。つまりまさに「自分自身に給与を与えるかの様に、資金を移動させること」。細かなルールは金融機関によりますが、例えば毎月/毎四半期/年一回..等、その頻度を選択することが出来ます。
また、引き出す金額についても自分自身で設定できます。例えば CPP (退職者年金) やOAS (老齢年金) 等を既に受け取っている場合などは、それらの支給額も踏まえた生活費を鑑み、RRIFからの引き出し額を自身で決めることが出来ます。

3. 最低引き出し額

引き出し額に上限はありません。ただし下限、つまり「最低引き出し額 (minimum withdrawal)」があります。
最低引き出し額は、年齢を元に定義された最低引き出し率を元に計算されます。

年齢 | 最低引き出し率 (%)
[ 計算式: 1 ÷ (90 - 年齢) = 最低引き出し率 ]
55歳2.86%65歳4.00%75歳5.85%85歳8.51%95歳+20.00%
56歳2.94%66歳4.17%76歳5.98%86歳8.99% 
57歳3.03%67歳4.35%77歳6.17%87歳9.55%
58歳3.13%68歳4.55%78歳6.36%88歳10.21%
59歳3.23%69歳4.76%79歳6.58%89歳10.99%
60歳3.33%70歳5.00%80歳6.82%90歳11.92%
61歳3.45%71歳5.28%81歳7.08%91歳13.06%
62歳3.57%72歳5.40%82歳7.38%92歳14.49%
63歳3.70%73歳5.53%83歳7.71%93歳16.34%
64歳3.85%74歳5.67%84歳8.08%94歳18.79%

当該年における1月1日時点でのRRIFの残高に対し、当該年齢の最低引き出し率を掛けた値が、その年の最低引き出し額となります。

例.
66歳となる年の1月1日の時点でのRRIFの残高が $750,000
66歳の年に対して適用される最低引き出し率 (%) = 4.17%
よってこの年の最低引き出し額は

$750,000 x 4.17 % = $31,275

引き出し頻度の設定に関わらず、一年においてこの最低引き出し額分の額は必ず引き出しを行わなくてはいけません。

4. Withholding Tax

最低引き出し額ピッタリの額を引き出したとすれば、実際に受け取る額はピッタリそのままその額です。ただし、もしこの最低引き出し額よりも多くの額を引き出した場合は、その超過分に応じて設定された Withholding Tax が適用され、その分が引かれた額を受け取ることになります。

最低引き出し額超過分へのWithholding Tax
超過額Withholding Tax率 (%)
$5,000以下10%
(ケベック州 5%)
$5,001~$15,00020%
(ケベック州 10%)
$15,001以上30%
(ケベック州 15%)

例.
66歳での年初の残高 ($750,000) と最低引き出し率 (4.17%) をもとに計算された最低引き出し額が $31,275 とする
対して、実際の引き出し額を $40,000 とすると
超過額: $40,000 - $31,275 = $8,725

$8,725 の内、最初の $5,000 の超過分への Withholding Tax: $5,000 x 10% = $500
$8,725 の内、$5,001~$15,000 の超過分への Withholding Tax: ($8,725 - $5,000) x 20% = $745
Withholding Tax 合計: $500 + $745 = $1,245

よって実際の受け取り額: $40,000 - $1,245 = $38,755

このWithholding Taxの徴収は、金融機関が引き出しを行う時点で「Withholding Taxが引かれた額だけしか渡さない (金融機関が直接Taxを納める)」という形で行われます。

Withholding Taxはあくまで「前払いのTax」です。タックスファイリングの際に、RRIFからの受け取りを含めたその年の最終的な所得額を申告しそれに応じた税額が確定し、リターン額が計算される過程において、このWithholding Taxが支払い済み税額の一部として加味されることとなります。

5. 課税対象所得

繰り返しますが、忘れてはいけないのは、超過額の有無に関わらず、最低引き出し額と超過額を含めた受け取り額全てが最終的に課税対象の所得となるということ。



大まかなルールとしては以上の通り。しかしこれだけのルールだけでも、毎年..
  • 十分な生活資金となる額を、
  • 節税をしながら、
  • 資金が尽きないように、
  • 自分がいつ亡くなるかはわからないという条件の中で
..中長期に渡りうまくやりくりをするためには、しっかりとした計画が必要だということがわかるのではないでしょうか。 
実質的にはさらにここに...
  • RRIF内の資金は (変換前のRRSPの状態の時と同様に) 非課税で運用し続けられる
  • RRSP内の資金全てを一度にRRIFに変換する必要はない (RRSPとRRIFを同時に保持できる)
  • 71歳までの間であれば、RRIFからRRSPに資金を戻すことも可能
といった要素も加わり、やりくりの複雑さ (または柔軟さ) はさらに増していきます。

リタイアメント全般、またはRRSP資金に関するプランや考え方は人それぞれ。RRSPの資金額によっては65歳よりも早い時点でのリタイアを考える人もいるでしょうし、仕事や生活の状況を踏まえてできる限りリタイアは先延ばしにしてRRSP資金を最大限増やし続けたいと考える方もいることでしょう。
RRIFの制度と、次に取り上げるAnnuity、それぞれのルールと利点等をしっかり理解し、自分に合った「リタイア後の収入」のやりくりを行うようにしましょう。


カナダでのリタイアメント: 引き出し

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

リタイア後の収入

RRSP (Registered Retirement Savings Plan) の制度を利用し、毎年のタックスファイリング時の控除利用と、非課税での運用という点を最大限に活用しながら長年に渡ってリタイアメント資金を育ててきたとしましょう。
年齢も重ね、ある時点 (一般的には65歳) においてリタイア (引退、または定年) を考えることでしょう。その時点から、長年に渡って貯めてきたリタイアメント資金から今度は「引き出し」を開始し、それを日々の収入とする生活が始まります。

この時点からは、「自分の資産から自分の収入 (生活費) を捻出する」という図式となるため、その「引き出し」をどの様に行うか、どの様な制度を利用してどう効率よくやりくりするか..、というのは大きなテーマとなります。
  • 十分な生活資金となる額を、
  • 節税をしながら、
  • 資金が尽きないように、
  • 自分がいつ亡くなるかはわからないという条件の中で
..うまくやりくりをする必要があるわけです。
これらの目標を達成するために、どの様な制度があり、どの様に利用するのが良いのか、まとめてみましょう。

リタイア後の収入に向けた制度/商品

RRSPの資金を「リタイア後の収入源」とする場合、一般的には主に以下の2つのオプションがあります。

  • Registered Retirement Income Fund (RRIF)
  • Annuity

RRIF (通称「リフ」) は、TFSA/RRSP/RESP/FHSA等と同じ様にいわゆるRegistered Accountの一つ。つまり政府が管轄する制度/システムであり、その制度/システムの名称のこと。
Annuity (アニュイティ) とは、一般名詞としての「年金 (個人年金保険)」を意味する言葉で、金融機関や保険会社が提供する商品の種類の一つのこと。
..と理解しましょう。

RRSPの資金の引き出しを始めるとした時点から、その資金をこれらのオプションに「変換」または「購入」し、それぞれのルールと中長期的計画に基づき資金の引き出し/取り崩しを行いリタイア後の収入源とする、という考え方です。

重要:
個々の事情によっては、3つ目のオプションとして..
  • RRSPからそのまま引き出す
というケースを考慮することもあるでしょう。様々な理由により、リタイア後の中長期的な収入源としての活用ではなく、やむを得ずRRSPから直接、短期的に一括または分割で引き出しを行わなければいけない状況になることもあるでしょう。そうなった時点でこれはいわゆる一般的な効率的な「リタイアメントプランニング」を外れるケースと考えられます。「効率的な制度/商品の利用」を優先する視点、また「節税」という観点から言えば、この3つ目のオプションはできる限り避けられるべきであると言えるでしょう。
重要:
RRSP口座は71歳を超えて保持することは出来ません。71歳の誕生日を迎えるその年の終わりまでに、上記2つのオプションへの変換/購入か、または完全な引き出しを行い、RRSP口座そのものは閉鎖する必要があります。
ちなみにもちろん、RRSPの資金全てをどれか一つのオプションのみに使わなければいけないということではありません。例えば、早急に必要な資金のためにまずRRSPから直接少額を引き出し、残りの内半分をRRIFへの変換へ、別の半分をAnnuityの購入へ、..といった具合にやりくりすることも当然出来ます。ルールはあくまで、71歳の年の終わりまでにすべてのRRSP資金をそれ以外のオプションに振り分け、RRSPそのものは閉鎖する必要があるということ。

引き出し分への課税

上記2つのオプションの詳細を見ていく前に、大前提となる根本的な税金への理解をおさらいしておきましょう。

どちらのオプションを利用するかに関わらず、元の資金がRRSPから変換された資金である限り、収入として引き出される資金は単純に「所得」であり、課税対象となります。

RRSPの利点であった「タックスファイリング時の控除」と「運用益が非課税」という2点をたっぷりと活用し、人によっては何十年とかけて今まで「税引き前の資金を、非課税で」運用し増やしてきました。晴れて引き出す時点となり、その引き出し額が (ある意味では当然のごとく、ここで初めて) 課税対象となるわけです。

しかしながら、ここでの引き出しによる所得は、働いている間に得ていたいわゆる給与所得よりは少ない額となるであろうという想定 (少ない所得であるから、それにかかる所得税の額も結果的に少ない) に基づき、ここで晴れてRRSPの3つ目の利点である「所得税の先延ばし」が発揮されるわけです。

これらの理解を踏襲しつつ、引き続き節税を意識しながら「引き出し」を行うことが重要です。RRIFとAnnuity、2つのオプションそれぞれに利点や特徴がありますが、節税という観点も含め、自分に合った選択をすることを心がけましょう。


カナダでのリタイアメント: Annuity

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

Annuityとは

Annuityとは、リタイア後のために貯蓄/運用してきたまとまった資金を、リタイア後の収入として活用するために利用される商品です。また、「Annuity」は、RRIF (Registered Retirement Income Fund) の様な「制度」ではなく、あくまで一般名詞としての「年金 (個人年金保険)」を意味する言葉で、各種金融機関や保険会社が提供する商品の種類の名称であると理解しましょう。
リタイアをすると決めた時点で、まとまった資金 (例えばRRSP資金) でAnnuityを「購入」し、その資金を元に商品のルールにしたがって、保証された決まった額を決まった期間あるいは生涯に渡って「収入」として受け取り続けることが出来ます。

金融機関や保険会社では複数のタイプや種類のAnnuity商品が用意されていて、その中から自分にあったものを選択することが出来ます。「商品」であるが故に、各商品の内部の細かなルール等はトレンドやニーズによって移り変わりがあるとも言えるので、本項ではあくまでAnnuityの大まかな仕組みと考え方を説明することのみに留めます。

Annuityの額

Annuityを購入するにあたってまず最初に考慮することは、その予算 (金額)。購入に当てられた資金が、自分がその後受け取り続ける収入の根本的な元本額になるわけですから、当然ながらその受け取り額を左右する最大の要素となります。RRSP資金を使ったリタイアメントというシナリオにおいては、RRSP資金の残高を最大額として、そこからいくらをAnnuityの購入に当てるかということを考慮することになります。
Annuityの購入は多くの場合一括支払いで行われますが、商品によっては、複数回に渡る支払いによる購入をすることも出来ます。

Annuityの期間

次に考慮されるべき大きな要素は、収入の受け取りの期間に関するもの。大きく分けて2つの選択があります。
  • Life Annuity
  • Term-certain Annuity
前者は、その名の通り一生涯受け取りが保証されるタイプのAnnuity
後者は、受け取り期間を指定して、その間だけ受け取りが保証されるタイプのAnnuity (例: 5年、10年、20年..)。
Life Annuityの利点は..
  • 一生涯受け取りが保証される
  • つまり、どれだけ長生きしたとしても、亡くなるまで受け取りが保証され続ける
  • 商品によっては、自分が亡くなった後に配偶者が受け取りを続けられるオプションも付けられる ..等々
不利な点は..
  • 購入資金分を受け取り切る前に、早く亡くなることもある
  • 配偶者が受け取る等のオプションを付ければつけるだけ、受け取り額は減る ..等々
対して、
Term-certain Annuityの利点は..
  • 指定した期間内の受け取りが保証される
  • 期間終了前に自分が亡くなった場合、配偶者等に対して期間終了まで受け取りが続けられる ..等々
不利な点は..
  • 指定した期間より長生きすれば、指定した期間後は受け取りがない状態となる ..等々
自分が想定するリタイア後の収入プランに合ったAnnuityの期間/種類を選択します。

その他の要素

購入資金 (元本) の額と、期間が選択された上で、それ以降に受け取り額を左右する要素には以下のようなものがあります
  • 性別
  • 年齢と健康状態
  • 亡くなった後の、配偶者等への受け取りオプションの有無
  • 想定運用利回り
  • 商品を提供する金融機関/保険会社そのもの
これらの点は、「Annuityは結局のところいわゆる『保険商品』である」という事実に立ち返ると、幾分理解しやすくなると思います。各種金融機関や保険会社は、様々な目的に合った複数の商品を各種オプションと共に提供しており、購入する側はそれらをよく吟味して自分にあった商品を選ぶ必要があります。



大まかなルールとしては以上の通り。
前項で示した、リタイアメント後の収入に関して考慮すべき以下の4点をAnnuityに当てはめた考えた場合、いくつかの点は単純化することが出来ます。
  • 十分な生活資金となる額を、
  • 節税をしながら、
  • 資金が尽きないように、
  • 自分がいつ亡くなるかはわからないという条件の中で..やりくりする
金額は確定させた上で購入するわけですから、「資金が尽きる」ことはありませんし、「Life Annuity」を選択したのであれば「自分がいつ亡くなるか..」を心配する必要もなくなります。また、運用益を気にして自分でやりくりする必要もなくなりますし、節税を気にしながら受け取り額コントロールする様な手間もなくなります。

ただし改めて、Annuityは結局のところ「保険商品」です。RRIFに比べて不利になる点や不自由となる点を受け入れる代わりに、「生涯 (または一定期間) に渡って収入が尽きない様にするための 安心を買う」為の商品であるということを、常に念頭に置く様にしましょう。


カナダでの投資: Tax-Free First Home Savings Account

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

Tax-Free First Home Savings Accountとは

Tax-Free First Home Savings Account (TFFHSA または FHSA) とは、「初めての住居購入に向けての頭金を貯めることを支援する」という名目で、カナダ政府が2023年よりその制度の施行を始めた、課税の免除を柱とした貯蓄支援制度です。
18歳以上でカナダ在住であり、住居購入を経験していない (詳細は後述) 全ての人にアカウント開設の資格があり、一年間につき最大$8,000、生涯合計$40,000の拠出が可能で、そのアカウント内で運用している限り運用利益に対しての課税を免除し、さらに引き出しの際にも課税がないとする制度です。

  • (RRSPのように) アカウントへの拠出はそのまま該当年のタックスファイリングの際に所得からの控除として利用することができる
  • (TFSAやRRSP/RESPのように) 運用利益に対しての課税が免除される
  • 「初めての住居購入のために利用する」限りにおいては、(TFSAのように) 完全に非課税で引き出すことができる

つまり、RRSPとTFSAのそれぞれの利点を両方同時に持った、とても強力な非課税アカウントと言える制度です。

* FHSAの様な非課税アカウント(Registered Account)の基本と、RRSP/TFSAと比較した際の利点等を理解するためには、そもそもTFSAとRRSPに関する理解は必須と言えます。TFSARRSPの詳細に関しては、それぞれの解説ページを参照してください。

アカウント開設資格

アカウントを開設するための資格は3つ。
  • 18歳以上であること*
  • (税制上の定義において) カナダ居住者であること
  • アカウントを開設しようとするその年、または現時点から遡った4年の間、自らが購入した住居に住んでいたことがないこと。
    (つまり厳密には、過去に住居を購入したことがあっても、それが4年より前であり、さらに4年より前の時点からすでのそこには居住していないのであれば、アカウントを新規に開設することは可能であるということになります)
注意
BC州、NB州、NL州、NS州、NT準州、NU準州、YT準州では、各州個別の「legal age」の定義に関する法律により、FHSA口座を開設できる年齢は18歳ではなく19歳となっています。

拠出

一年間につき$8,000が拠出限度額として設定され、生涯合計$40,000の拠出が可能です。
アカウントを開設した後に、ある年において$8,000に満たない拠出しかしなかった場合は、(TFSAのシステムと同様に) 未使用の分が翌年に繰り越されます。ただし、繰り越しができるのは一年分の最大額に相当する$8,000のみ。つまり、複数年にわたって未使用の分がありそれが$8,000を上回る額だとしても、翌年分に繰り越しができるのは$8,000までです。そして生涯の拠出額合計が$40,000に至った時点で、それ以上の拠出はできなくなります (年間の拠出額合計を上回る拠出をしたり、生涯拠出額合計を超える拠出をすれば、ペナルティが発生することとなります)。
つまり、最速で5年間 ($8,000 x 5年 = $40,000) で生涯限度額に到達するような拠出をすることもできますし、あるいはもっとゆっくりと、例えば10年間かけて ($4,000 x 10年 = $40,000) でゆっくりと拠出をするというようなこともできるわけです。
また、TFSAと同様に、複数の金融機関においてFHSAアカウントを開設することができますが、年間及び生涯の拠出限度額は当然そのままです。TFSAと同様、自分自身で拠出額の記録等を管理する必要があります。

拠出をした分の額は、その年のタックスファイリングにおいて、「控除」として利用できます。つまり、RRSPへの拠出と同様に、その年の課税対象所得額そのものを減らすために、総所得額から引き算 (deduct) することのできる項目として利用できるということになります。
重要:
RRSPに既に入っている資金からFHSAへ資金を移動 (transfer) させるすることで、FHSAへの拠出とすることも可能です。
この場合、RRSPからの移動は「引き出し」とはみなされないため、非課税で行うことができます。
  • ただしこの場合でも、FHSAの拠出限度額はそのまま適用されます。RRSPからの移動であれ、通常の拠出であれ、年間$8,000、生涯$40,000の限度額ルールはそのままです。
  • また、この引き出しによってRRSP側の年間拠出額が影響をうけることはありません。引き出しを行ったことによって、翌年のRRSPの年間拠出限度額が増えるようなことはありません。

運用

TFSAやRRSP/RESP等と同じく、拠出先によって様々な投資商品を通して運用をすることができます。そして、運用によって得た利益は完全に非課税です。「FHSAという箱」の中で運用をしている限り、利子利益やキャピタルゲインをタックスファイリングの際に所得として申告する必要は一切ありません (そもそもT5フォーム等も発行されません)。

引き出し

考え方として、TFSAと違い、頻繁な「引き出し」という概念は意識するべきでないとも言えます。「FHSAからの引き出し」とは、まさに「住居購入」の時が来た時に行う一括引き出し。それがこの制度の目的として想定されているメインの「引き出し」のシナリオとなります。「住居購入」の機会が訪れた際に、その目的 (主に頭金) に利用される限りにおいて、運用益分も含めFHSAから非課税で引き出しを行うことができます。
重要:
初めての住居購入の為の資金調達のもう一つの手段として、RRSPから $60,000 を非課税で引き出す (2024年4月より、それまでの $35,000 から増額) ことのできる「Home Buyers’ Plan (HBP)」という制度が既に存在します。FHSAとHBPは、ともに同一の住居購入の為の資金として併用する (両方とも利用する) ことができます。つまり、住居購入の為の資金として、一人に付きFHSAから $40,000 (プラス運用益)とHBPから $60,000 で、合計 $100,000+ が利用できる (二人分ならば$200,000+) ということになります。

様々な理由により「住居購入」の機会が訪れない/訪れなかった場合に際しては、以下のような「救済」的ルールが用意されています。
  • 71歳に至るまでの間で、いつでも自由にFHSAからRRSP (またはRRIF) に資金を移動させることが可能。また、この移動は非課税で行うことができ、さらにRRSPの拠出限度額に影響を与えない/影響を受けない
    (つまり、移動させることによって当該年のRRSPの拠出限度額が減ることはないし、また、移動させようとする時点で、当該年のRRSPの拠出限度額に空きがあるかどうかも関係ない)。

    >> この場合は、結果的にその分を将来RRSPから引き出す際には所得となり課税対象となるため、FHSAの「非課税で引き出せる」という利点を失うという点が、ペナルティ的要素となります

  • FHSAアカウント開設から15年たった時点で、FHSA内の資金を使用する機会がなかった場合、アカウントを閉じる必要がある。その際は、上記のようにRRSP (またはRRIF) に資金を移動させるか、単純に課税対象の収入としてその時点で引き出す必要がある。

    >> 上の場合と同じく、RRSPに移した場合は未来の時点で、即時に引き出した場合は即時に、所得となり課税対象となるため、FHSAの「非課税で引き出せる」という利点を失うという点が、ペナルティ的要素となります



Tax-Free First Home Savings Accountを始めるべきか

これまで、住居購入の頭金を貯蓄するために利用できるRegistered Account (つまり、目的を指定されずに利用できる非課税貯蓄アカウント) はTFSAしかなかったわけですが、FHSAの登場により、住居購入資金貯蓄に特化したRegistered Account枠ができたわけです。将来カナダで住居購入を考えている方は、間違いなく利用すべき制度であると言えるでしょう。
例えば最初の5年間で毎年最大の$8,000を拠出し続け、その後投資利回り5%を毎年実践できたとするならば、15年後の残高は$75,600程。パートナーとの合計であれば$151,200。もう少し頑張って利回り7.3%が実現できれば、1人$100,500、二人で$201,000程。それだけの資金を生み出す可能性のあるアカウントを、TFSAとは別の枠として持つことができるということです。

また、そこまで先の未来はまだ見据えておらず、「将来家を買わないかもしれない...」という懸念がある方も多いことでしょう。ただ、上記の2点の「救済」的ルールは、結果的に家を買わなかったとしても (あるいはもっと極端に「そもそも家を買うつもりはない...」のだとしても)、結果的に少なくとも損をすることは無いようにデザインされたルールと言えます。

これらの点を鑑みても、少なくとも10年以上の単位で今後もカナダに住み続ける予定であるのであれば、Tax-Free First Home Savings Accountは、ぜひとも利用すべき制度であると言えるでしょう。


カナダでの投資: Wealthsimple のすすめ

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

Wealthsimple

TFSA や RRSP や RESP を既に始めている方の多くは、各種証券/保険会社や銀行を通して、主に Mutual Funds の購入等で長期積立投資を実践していることでしょう。
積立投資にも慣れてきて、マーケットの見方もそれなりに理解出来る様になってきて、「もっと自分でコントロールできる投資をしてみたい」、「個別株やETFなどを、自分の判断で選択して売買してみたい」、「積立として購入し続けるだけでなく、売却して利益を出す投資をしてみたい」...などなど、投資に関してどんどんと貪欲になってくる方もいることでしょう。

近年、新たに「投資を始めたい!」と思っている方にとって、各種投資商品の売買を始められる環境を整えるためのハードルは、益々低くなっています。その中でも代表的なのが、2014年からサービスを開始し、主にミレニアル世代をターゲットに、「コミッションフリー (売買委託手数料無料)」を最大の売りとしてサービスを提供している、Wealthsimple (ウェルスシンプル) です。モバイルアプリを通して、その名の通りとにかくシンプルな使用感でサービスを提供し、大手の Questrade や Qtrade とは一線を画し、近年大幅に利用者を増やしています。

いくつかある Wealthsimple 内のサービスのカテゴリーの中でも、上記のようなニーズに応えていて、管理人自身も利用し、(一切の個人的しがらみやコネクション等全く無しで(笑)) 問題なくおススメできるプラットフォームが、Wealthsimple上の「Self-directed investing」となります。

Self-directed investing

  • 米ニューヨーク市場 (NYSE)、トロント市場 (TSX) をはじめ、アメリカとカナダのメジャーな市場で取引されている株式とETFの売買が可能です。
  • 株式/ETFの売買に関して、いわゆる委託手数料は一切かかりません。ただし、米ドルで取引される株式/ETFの売買に際しては、1.5% の為替手数料が発生します (売買の際に内包されています)。
  • Self-directed investing カテゴリー内で扱われる「アカウント」の種類として、「TFSA」、「RRSP」、「RESP」、「FHSA」等を始めとするいわゆる「Registered (非課税)」アカウント群と、「Non-registered (通常/課税)」アカウントがあり、当然のごとく「Registered (非課税)」アカウントを利用し売買をすれば、キャピタルゲイン等は非課税となります。
  • アカウント内の最低保持額等の制限もなく、株式/ETF等も1株から(銘柄によっては金額指定でのフラクションナルシェア)の購入が可能です。
  • 売買の際の注文の仕方として、いわゆる「成行注文 (Market Buy/Sell)」「指値注文 (Limit Buy/Sell、Stop Limit Buy/Sell)」ともにサポートされています。
  • (2023年より) オプション取引の機能もサポートされています。
シンプルであるが故に、サポートされてない機能、または不便な点:
  • 単純に、上場されている株式とETFの売買のみが可能です。投資信託は売買できませんし、IPO (新規株式公開時の買い) に参加するようなこともできません。また、ショート (空売り) の機能もありません。
  • (資産額によりますが) 銀行等からトランスファーされた資金が実際に使えるようになるまでに、比較的長い時間 (3日程) がかかります。

留意点

手軽であるが故に、投資全般に関しての経験や知識をさほど持ち合わせていない方でも簡単に始められるという利点はあります。しかし、やはり個別株等でしっかりと利益を出すためには、株式を購入する会社/企業の四半期毎の業績報告や業界の動向に関するニュース記事をこまめにチェックするなど、ある程度以上のコミットメントが必要となります。

弊サイトの姿勢としては...、
Wealthsimple の Self-directed investing は、「投資信託等で長期積立投資を既に行っており、投資全般への経験と知識をある程度持ち合わせていて、将来を見据えたある程度の投資資産を既に別に保持しているという条件の上で、余剰資金で、リスクを享受した上で、あえて個別株/ETFでの投資経験を積みたい.. というニーズにおいて、利用価値のある有効な投資チャンネル」である
と考えます。

また、利用の際には、間違いなく「Registered (非課税)」アカウント (目的に応じて「TFSA」、「RRSP」、「RESP」、「FHSA」から選択) での利用を強くお勧めします。TFSA または RRSPFHSA に拠出額の空きがあるにもかかわらず、あえて「Non-registered」アカウントを利用して非課税の恩恵を無下にする理由はありません。しっかりと、それぞれの自分のその時点での拠出限度額を理解した上で資金を移し、利用するようにしましょう。
注意:
近年その知名度も格段に上がり、提供するサービス内容も拡大されているWealthsimpleですが、弊サイトの姿勢としては引き続きあくまで「コミッションフリー投資環境」としての「Self-directed investing」のサーピスに関してのみおすすめする立場を取ります。「Cash」アカウントとして提供されている通常銀行サービスの様なChequing口座商品やHISA商品群は、他金融機関の商品と比較しよく吟味した上での利用判断をするようにしましょう。

紹介ボーナス

もし上記の情報等を参考に、新たに Wealthsimple を利用してみよう! と思い立った方がいましたら、是非とも紹介ボーナス ($10) 付きの下記の紹介リンクから、アカウント作成及びアプリのダウンロードへとどうぞ。


カナダでのリタイアメント: RRSP: Spousal RRSP

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

Spousal (配偶者) RRSP とは

RRSPは、根本的には個人単位で管理をするもので、「自分のリタイア/老後資金を自分で貯めていく」というコンセプトに基づいて、自分名義のプランへ拠出をしていくものです。
したがって、例えばリタイア/老後を迎えた夫婦やコモンローパートナーカップルは、それぞれが自分名義のプランからその後の老後生活資金を「所得」として捻出することになり、その資金額がカップル間で大きく違うということも十分にありえます。さらに、その際に所得としてプランから引き出していく額が多ければ多いほど、その分にかかる所得税の額も増えるわけで、これもまたカップル間で大きく差が出るということも十分にありえます。
差があるだけならよいのですが、例えばこの差により、所得税額に関して結果的に大きく損をすることもありえます。

シンプル (かつ極端) な例を示してみましょう。
とある夫婦間において..
  • フルタイムでのフルキャリアを終えてリタイアをした 夫側のプランには $1,000,000 の資金があるとする
  • 主婦として過ごしていた時期があり、それ以外でのフルタイム職とパートタイム職を持っていた間の拠出のみで貯めた 妻側のプランには $200,000 の資金があるとする
= 夫婦の合計RRSP資金は $1,000,000 + $200,000 = $1,200,000

リタイア後、それぞれが年間 5% 相当を老後の所得として引き出すとすると
  • 夫側の年間所得が $1,000,000 x 5% = $50,000
  • 妻側の年間所得が $200,000 x 5% = $10,000
  • その時点での、夫側の所得 $50,000 にかかる税率が 20% だとすると、夫側の税額は $50,000 x 20% = $10,000
  • その時点での、妻側の所得 $10,000 にかかる税金が (各種控除等の結果) $0 だとする
結果、この夫婦の合計所得 $60,000 に対する税額は $10,000 + $0 = $10,000 となります。

対して、例えば夫婦の合計RRSP資金が同じ $1,200,000 だったとしても、夫婦それぞれのプラン内に、半分づつ同額の $600,000 の資金があるとしたらどうでしょう。
= 夫婦の合計RRSP資金は $600,000 + $600,000 = $1,200,000

リタイア後、それぞれが年間 5% 相当を老後の所得として引き出すとすると
  • 夫側の年間所得が $600,000 x 5% = $30,000
  • 妻側の年間所得が $600,000 x 5% = $30,000
  • その時点での、夫側の所得 $30,000 にかかる税率が 10% だとすると、夫側の税額は $30,000 x 10% = $3,000
  • その時点での、妻側の所得 $30,000 にかかる税率が 10% だとすると、妻側の税額は $30,000 x 10% = $3,000
したがって、この夫婦の合計所得 $60,000 に対する税額は $3,000 + $3,000 = $6,000 となり、最初の例に比べて、全く同じ合計RRSP資金額、全く同じ年間引き出し額、全く同じ合計年間所得額なのにもかかわらず、年間 $4,000 (=40%) もの節税が出来ているということになります (あくまで例)。
このように、カップル (夫婦、コモンローパートナーカップル、同性カップルを含む) 間でのRRSP資金の差、及び引き出し額 (=所得) の差を縮め、上記の例のような節税を実現させてくれるのが「Spousal RRSP (配偶者 RRSP)」というシステムです。

基礎ルール

  • Spousal RRSP とは、配偶者 (上記の例だと妻側) を「annuitant (受給者)」として定義できるRRSPプラン。
  • 自分 (上記の例だと夫) のRRSPプランとは別のプラン扱いとして、各種金融機関で配偶者名義の元 (上記の例だと妻)、開設することができる。
  • 拠出をする (拠出ができる) のはあくまで自分 (上記の例だと夫) 。配偶者側 (上記の例だと妻) はこの Spousal RRSP プランへは拠出はできない。
    ただし、もちろん配偶者自身 (上記の例だと妻) が、この Spousal RRSP プランとは別の、自分自身のRRSPプランを持ち、そこへ自身で拠出することは問題なし。
  • 年間拠出制限額は自分 (上記の例だと夫) の制限額が適用される。つまり、自分のRRSPへの拠出と、Spousal RRSPへの拠出の合計が、自分の拠出制限額を超えてはいけない。

利点と目的

  • Spousal RRSP は、リタイア以前の段階で、カップル間の所得額の差が大きい場合 (つまり、そのままではリタイア時のRRSP資金に大きな差ができてしまうことが予想される場合) にこそ利用されるべきシステムです。
  • 最終的な目的は、リタイア時の両者それぞれのRRSP資金額を出来る限り同程度にすること、ひいては、リタイア後に同程度の割合いで引き出しを行うことで得られる所得に関して、一方だけに対し高い所得税率区分が適用されることを避けることです。
  • 通常のRRSPは、自分が71才になった年以降は拠出をすることが出来ませんが、例えば配偶者が自分より年下の場合 (かつ自分の拠出限度額に空きがある場合)、配偶者が71才になる年が終わるまで、Spousal RRSP に対しての拠出をすることができます。
  • Attribution Rules
    少なくとも拠出に関しては比較的簡単なシステムですが、一点だけ注意すべき点として、以下の「Attribution Rules」と呼ばれるものがあります。
    • Spousal RRSP に拠出を行ってから3年以内に引き出しを行うと、その引き出し額の全てもしくは一部は、拠出を行った側 (上記の例だと夫) の所得として申告しなければならない
    これは、多額の駆け込み拠出によって極端な税金逃れができてしまう..という盲点を制限するためのルールとして設定されています。例えば、Spousal RRSP からの引き出しを始めようとする3年前からは Spousal RRSP への拠出を停止する...など、このルール/制限を踏まえた拠出を計画するのが賢明と言えるでしょう。
もう一つの隠れ(?)利点と言えるのは、「Home Buyers' Plan (HBP)」関するものです。RRSPのページでも触れている通り、本来リタイア後資金としてのみ利用されるべきRRSP資産ですが、例外として、一人のRRSPプランにつき $60,000 (2024年4月より、それまでの $35,000 から増額) まで、「初めて住宅を購入する際の資金 = Home Buyers' Plan (HBP)」への利用が許されています。つまり、(収入が少ない側の名義となるSpousal RRSPを含めた) カップルそれぞれの側の名義において $60,000 以上のRRSP資産があれば、カップル合同で $120,000 まで HBP への利用ができるということになります。

まとめ

カップルの形は様々で、こと家計及びそれぞれの資産管理に関しては、一括または共同口座などでまとめて管理している場合や、意識的に完全に分けている、という場合もあることでしょう。Spousal RRSP は、基本的にはそのカップルがそのままの関係を維持しているという前提のもと、リタイア後にそこから引き出しを行う際 (つまり比較的遠く不確定な未来) におけるやりくりにおいて、その時点での節税を実現出来るようにするための制度です。したがって、様々な理由から「この制度はあえて利用しない」という選択をする場合もあることでしょう。
個々の環境/事情をよく考慮し、カップル間でしっかりと話し合いを持った上で、この制度を利用するか否かを吟味するようにしましょう。


カナダ生活: Moka (旧MYLO) のすすめ

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

貯金がなかなかできない!という方に向けて、一つの方法として有効なのが「スペアチェンジ (余分なお釣り) 貯金」というアプローチ。「現金を使って買い物をした時、小銭としてもらったお釣りを、その量に関わらずそのまま貯金箱に貯める」という、ある意味では最も古風かつ単純な方法です。
これを少しアレンジさせたのが、いわゆる「500円玉貯金」的な、特定の硬貨だけを貯める方法。カナダにおいても、「ルーニー ($1硬貨) 貯金」や「トゥーニー ($2硬貨) 貯金」などとして実践することができます。ズッシリと満タンに貯まった缶を満を持して開ける快感。合計額カウントも簡単で、「$100以上も貯まっていた!」なんて事も可能でしょう。
...しかし時代は既にキャッシュレスの世の中。現金で買い物なんてほとんどしない、そもそも現金を持ち歩いてすらいない..ので、そんな方法はもう現実的でない、という方がほとんどなのではないでしょうか。

そんな場合でも、「スペアチェンジ貯金」とほぼ同じコンセプトで行える貯金方法が、ここ数年カナダにおいてもそのアプリ環境等が整い始めてきている「ラウンドアップ (お釣り繰り上げ) 貯金」という方法です。

ラウンドアップ貯金

デビットカードやクレジットカードで買い物をした際に出る $1 以下の端数額に対して、次の $1.00 に達するまでの端数分の金額を自動的に別の場所に移動させて、無意識のうちにコツコツと「いつの間にか貯まっている!」を実践する貯金方法。
例:
  • Tim Horton で $1.59 でコーヒーを買ってデビットカードで支払う
    >> $0.41 を自動的に別の場所に移動させて貯める
  • Canadian Tire で $50.19 でアウトドア用品を買ってクレジットカードで支払う
    >> $0.81 を自動的に別の場所に移動させて貯める
お隣アメリカにおいては、金融機関が提供するサービスとして、またはもっとお手軽なモバイルアプリ (AcornsDigit 等) などを通して、この貯金方法を実践できる環境の普及がすでに進んでいます。

そして、カナダにおいてその先駆けとなっているのが、2017年よりサービスを開始しているアプリの「Moka (モカ)」です。管理人自身も既に2019年前半から利用していて、大いに活用し、安心してお薦めできるアプリです。
(2020年7月より、旧社名/サービス名の「MYLO」から、「Moka」へとリニューアルされました)


Moka は iOS 及び Android 環境で動作するアプリとして提供されています (アプリ自体は無料)。そのインターフェイス等は今後変更/更新されることも十分に考えられるため、本項ではいわゆるチュートリアル的にその登録方法や動作方法などを解説するというアプローチではなく、Moka 上でのラウンドアップ貯金の実践の基礎的なコンセプトを紹介するというアプローチをとっていきたいと思います。
利用/アカウント設定方法
  1. 公式サイト よりアプリをダウンロードし、アカウントを作成、ログインする。
    • 上記リンクからのアクセスで、$5 の紹介ボーナスあり
  2. 連携させる (ラウンドアップ貯金額の移動元となる) 銀行口座/デビットカード/クレジットカードを設定する。
  3. インベスター (投資) プロファイルを設定。
    • (ラウンドアップ貯金額の移動先となる) Moka 上のいわゆる貯金箱は、実は自動的に「投資アカウント」となります。
      >> ここがある意味 Moka のキモのサービスとなります (後述)。
    • ここでは、 Moka 側がその投資先を自動的に選ぶための参考として、自身の投資に関する知識や収入等に関する情報を提供します。
  4. ゴールを設定する (複数可) 。
    1. ゴール金額を設定
    2. ラウンドアップのルールを設定
      • 最も単純なラウンドアップ (次の $1.00 に達するまでの端数分の金額を移動させる) の他にも、「その端数の〇倍の額を移動させる」や、単純に「週に$〇の固定額を移動させる」等に設定することができます。
    3. ゴール達成時期を設定
    4. 投資先の種類を設定
      • TFSA や RRSP を利用することも可能です。
  5. 日々の買い物で貯金を開始!
    • 実際の金銭の移動は週に一回。端数額一週間分の合計額が一度にまとめられて移動します。
基本的にはこれだけの設定で、「ラウンドアップ貯金」の実践をすぐにでも始めることができます。
そして一番大事な利用料金:
  • 月額 $3 (指定した口座またはカードから自動引落とし) -- 2021年11月21日より$3.99
サービス開始当初から数年間は、月額 $1 の「MYLO Basic」と、月額 $3 の「MYLO Advantage」という2種類のサービス分けがあり、TFSA/RRSPの利用制限や引出しにかかる日数などで差をつけていましたが、現在は月額 $3 (2021年11月21日より$3.99) のサービスのみとして一本化されています。
大きな額でゴールを設定して、長期に渡る貯金を目指すもよし。数か月のスパンで数百ドルでゴールを設定して、ちょっとした買い物のための資金作りに利用するもよし。使い方は自由、コンセプトはあくまで「いつの間にか貯まっている!」の実践です。

ここまでの情報を参考に、さっそく Moka を利用してみよう! と思い立った方がいましたら、$5ボーナスがもらえるこの 紹介リンク から、是非ともどうぞ。

Moka の本質

ここより先では、Moka のビジネスケースにもう一歩踏み込んで、このサービスの本質により迫ってみましょう。
とは言いつつ...、それを最も端的に説明できるのが以下のビデオ。2018年、CEO自らがCBCの人気番組「Dragons' Den」(「¥マネーの虎」) に出演し、ドラゴン達からの追加出資を募った際のビデオです。

(※残念ながらCBCオフィシャルサイト上での当該ビデオへのリンクはすでに無効となっている模様)

Dragons' Den: Season 12 Episode 19
[https://www.cbc.ca/dragonsden/m_pitches/mylo]

ビデオ内の説明でも触れている通り、Moka (旧MYLO) のビジネスのキモは、まず第一に顧客に対して投資への資金投入を促すこと。第二に顧客の日々の消費行動のデータを集めること。そして第三に、それらのデータをもとに、提携する各種金融サービス利用へと誘導をすること。$3の Moka のサービスの利用料そのものでなく、第三の点である提携する各種金融サービス利用からのマージンに主眼を置いていることがわかります。

ここまで大っぴらにしてくれていれば、利用する方としては随分と安心できます。もちろん長期的な意味で、ビジネスモデルの思惑通りに、将来において保険やモーゲージ等の提携する各種金融サービスを利用する機会があってもよいでしょう。あるいはあくまで「ラウンドアップ貯金」を実現するだけのツールだと割り切って利用するのもよいでしょう。(管理人としては、少なくとも現時点では、完全に後者のみの利用と割り切って使用していますが 笑)

改めて、これらの情報を参考に、利用してみよう! と思い立った方がいましたら、$5ボーナスがもらえるこの 紹介リンク から、是非ともどうぞ。


カナダでの投資: 実践編 II

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

実践編 II では、長期投資のシナリオに特化せず、またリタイアメント資金や教育資金以外を目的とした投資のケースを考察してみましょう。

TFSA (Tax-Free Savings Account)

リタイアメント資金 (RRSP)、教育資金 (RESP)、住居購入資金 (FHSA) への投資では、それぞれの制度を利用することで非課税の運用が可能でしたが、それら以外の目的の資金を投資によって運用したい場合には、TFSA (Tax-Free Savings Account) の制度を利用することで、こちらも非課税での運用が可能です。
*TFSAの制度や仕組みそのものについては次項にて詳しく説明していますので、そちらを参照してください。
TFSAには拠出限度額があるので、運用に回せる資金額はそれによって制限されます。ただし、2009年から始まったこのTFSAの制度、拠出制限額の累計は (2026年現在で) すでに$109,000。その全てを投資環境として使い切ってしまっている人はまだまだ少ないのではないでしょうか。TFSAの拠出額枠がまだ残っているのに、わざわざキャピタルゲインへの課税が発生するTFSA外の環境で投資を行う理由は一切ありません。まずはTFSA枠をしっかりと有効に利用することを心掛けましょう。

TFSAを利用した投資では、銀行や証券会社を通じてそのアカウントを開設し、それぞれが提供している投資商品を通じて投資を行うことになります。銀行であればGICや投資信託が中心に、証券会社であれば投資信託と株式が中心となります。

ポートフォリオ
単純に余剰資金の積み立て先として投資商品を選び運用するような場合では、RRSP/RESP/FHSAと同様に、長中期ゴールの投資と見立てて戦略を立てることができます。長中期投資の基本はともかく、「ゴールまでの期間がまだ長ければ長いほどリスクは高めに、ゴールに近づくほどリスクは低く」。これを踏襲しながら投資商品の選択を行う必要があります。
あるいは、数年単位のある程度近い将来をゴールとして具体的な達成目標金額を設定している場合などは、それぞれのゴールに見合った戦略を立てることが必要となるでしょう。その場合は、セオリーをあえて無視しつつ、リスクを覚悟しながらも高いリターンを望む戦略 (ハイリスク、ハイリターン) をとることもあるでしょう。

どちらの戦略をどの程度の割合で踏襲するかに関わらず、ここでも最も基本として考えられるべきことは「Diversify = リスク分散/分散投資」、これ以外にはありません。自分の年齢、ゴールまでの期間、リスクを負わずに運用されるべき投資額、リスクを負って運用しても許される投資額、各投資商品に関する自分の知識等々、さまざまな要素を鑑み、自分の環境に合ったポートフォリオを構築するよう心掛けましょう。

ドル・コスト平均法 (dollar-cost averaging)

実践編の最後に、長中期投資の戦略として一般的な、「ドル・コスト平均法」という投資手法を紹介してみましょう。
「安い時に買い、高い時に売る」というのは投資利益を得るための基本ではありますが、こと長期投資においては、「売る」という行為はあまり意識することはありません。それよりも、投資資産を増やすために投資商品を、いつ、いくら、どのように「買う」かということが大事になってきます。
例えば、投資商品の新規購入は「一年に一回だけ、その時手元にある余剰資金で一括で..」という方法をとったとしましょう。投資商品である以上、その価格は常に変動しているわけですから、その一年に一回の購入の機会の瞬間が、たまたま年間最高値の状態であることもありえるわけです。あるいは、一年に一回の購入の機会に年間最安値の状態であったのに、たまたまこの年に限っては余剰資金が少なかった..、ということもあるかもしれません。
そのような不確定要素による損得の影響をできる限り少なくするためにとる戦略が、「定額購入法」とも呼ばれるこの「ドル・コスト平均法」という手法です。
方法はいたって簡単、
同一額で短い周期で定期的に継続して購入する
これだけのことです。
つまり、「一年に一回、不定期額」での資金投入ではなく、「月に一回、定額」での資金投入をするということ。
金額を定額にすることにより、自動的に「投資商品の値段が高い時には少ない数量を、値段が安い時には多くの数量を購入」することができ、平均値の点で結果的に長期的には有利になるという考え方です。
相場の動きにより、その優位性の度合いには賛否はあるものの、長期投資における基本的な戦略の一つとして知られる手法です。ほぼ積み立て預金のような意識で家計の予算に組み込みながら、投資資金を確実に増やすことができるという意味で、とても有効な手法あることには間違いありません。


カナダでの投資: 実践編 I

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

実践編へと進んでみましょう。
前項で述べた通り、投資の目的が決まっている場合は、その目的にあった「箱 (制度)」を利用するのがベストの選択となります。
ここで忘れてはいけないのは、投資によって収益を得た場合 (投資商品がただ値上がりしている状態、いわゆる「含み益」の状態ではなく、実際に値が上がった時点で投資商品を売却して利益「=キャピタルゲイン」が発生した場合) は、その収益は収入扱いとなり、タックスファイリング時にはその50%の額が課税対象として扱われ、相応の所得税を払わなくてはいけないという事実です。
だからこそ、非課税で運用できる以下の制度を最大限利用して投資資産を増やすことが、最も有益な方法となります。
  • 老後/リタイア後の生活のための資金形成には RRSP
  • 子供の教育のための資金形成には RESP
  • 住居購入のための資金形成には FHSA
  • その他の資金形成には TFSA

RRSP、RESP、FHSA

それぞれの制度の詳細やシステムについては各々の個別の頁 (RRSPRESPFHSA) に任せるとして、ここではまずRRSPとRESPとFHSAにおける投資商品の選択と戦略についてまとめてみたいと思います。

RRSP、RESP、FHSAは、ともに長期の運用を前提とした投資環境です。RRSPなら40年間以上、RESPなら18年間、FHSAなら5年から15年程を目安として拠出 (投資商品の購入) をし続け、RRSPならリタイアメント時 (65歳時あるいはそれよりも早い時点)、RESPなら子供が18歳になる時点、FHSAなら住居の頭金が貯まった時点をゴールとして、運用を管理する必要があります。通常は、いわゆるRRSP/RESP/FHSA Providerとなる銀行をはじめとする金融機関を通して管理をするわけですから、投資先はそれぞれの金融機関が提供する投資商品ということになり、ほとんどの場合は投資信託 (Mutual Fund) が最も一般的な選択肢となります。

ポートフォリオ

投資における「ポートフォリオ」とは、保有している投資商品や投資資産の「組み合わせ」のことを指します。自身の環境やゴールを鑑み、リスク分散を考慮しながらも目標を達成できるような「効率的な組み合わせ」を模索しながらポートフォリオを構築します。 長期ターゲットの運用では、

「ゴールまで時間がある場合はより積極的にリスクの高い投資商品を、
ゴールに近づくにつれてより保守的なリスクの低い投資商品にシフトしていく」

というのが一般的な戦略になります。10年以上のスパンでの運用では、例えば早い時期にリスクの高い投資で失敗をしたとしても、まだ十分に取り返すだけの収入/拠出と時間がある、という考え方です。この考えを踏襲した上で、下記にあげるようなMutual Fundのカテゴリの中から自分にあったファンドを選び、また必要に応じてバランスを調整しながら運用をしていくことになります。
マネーマーケット (Money Market) ファンド
財務証券や預金証書、通貨立てなどで構成されていて、想定される利回りも極端に低い代わりに、元本割れリスクも極端に低い。ファンドのカテゴリーにおいては、最も安全性の高い類のファンド。

フィックスドインカム (Fixed Income) ファンド
固定金利ベースの国債などをベースに構成されていて、一定の利率で上がり続けることが想定されるファンド。元本割れリスクも低く、こちらもファンドのカテゴリーにおいては、安全性の高い類のファンド。

バランスド (Balanced) ファンド
国債、通貨立て、国内株式、海外株式等々、複数の対象で構成されていて、それぞれの割合が常に一定に保たれるように更新されながら運営されるファンド。リスクは高くなりつつも、一つの要素の影響を最小限に抑えるためにリスク分散がされている。安全性は「中」程度のファンド。

ターゲットイヤー (Target Year) ファンド
バランスド (Balanced) ファンドをベースにしながら、ターゲットとなる未来のある時点 (年) に近づくにつれて、よりリスクの低い対象を増やしながら構成していくファンド。
例えば「Target 2030 Fund」と銘打たれたファンドでは、2010年代には株式が中心のリスクの高めの構成で運用され、2020年代にはその割合がよりリスクの低い国債などに移行され、ターゲットの2030年の時点においては99%通貨建ての構成になる。主にRRSPやRESP用のファンドとして推奨されていて、「Target Retirement 2030 Fund」や「Target Education 2030 Fund」等、わかりやすく名付けられている。安全性は、「中」程度で始まり、ターゲット年に向けて段階的に低くなる。

アメリカ / カナダ (US / Canada) ファンド
大局的にはほぼ連動して動くとは言え、アメリカとカナダはあくまで別の市場。そのニーズに対応して、カナダ市場の株価などに特化して構成されたファンド、アメリカ市場の株価に特化して構成されたファンドが、別々のカテゴリーのファンドとして提供されているのが通常。

インターナショナル (International) ファンド
欧州市場の要素で構成されるファンド、アジア市場の要素で構成されるファンド、日本市場の要素で構成されるファンド等々、市場地域をベースに構成されるのがこの類のファンド。単純に、カナダ/アメリカから見て外部市場であるという理由において、最もリスクが高く安全性の低い類のファンドとして認識される。
RRSP、RESP、FHSAの元来の目的である、「未来のある時点へ向けての貯蓄/資産運用」という点を鑑みると、一般的には、ターゲットイヤーファンドを中心にポートフォリオを構築するのが最も安全かつ無難であると考えられます。ただし、全ての資金をターゲットイヤーファンドのみに投入するのは賢明とは言えません。ここでも、さらにもう一段階「リスク分散/分散投資」の基本を踏襲することが大切です。
例えば...
  • フィックスドインカムファンドとターゲットイヤーファンドにそれぞれ30%投入しつつ、リスクを覚悟でカナダとアメリカの株式中心のファンドにそれぞれ20%づつ投入する
あるいは、
  • 中国市場、またはその他の途上国に関わる要素を鑑みて、アジア市場の成長が期待できるので、向こう5年間はアジア株中心のファンドをより多く組み込んでみる
等々。
すでに個々で分散投資がされているそれぞれのファンドを、さらに「複数」バランスよく選択することで、更なる分散投資が可能となるわけです。


カナダでの投資: 基礎知識

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

投資に関する基礎知識として、まずは投資商品の種類、とくに比較的簡単に手の届く類のものをまとめてみましょう。
  • 株式
    投資商品と聞いてまずはじめに思い浮かぶのは、おそらく株、いわゆる株式ではないでしょうか。英語では「share」あるいは「stock」、また文脈によっては「equity」とも呼ばれます。
    「share」という言葉からもわかるとおり、ある株式会社/企業の株式を購入するということは、その会社の一部を所有することを意味します。一般的に、会社の業績が良ければ (または、良くなることが見込まれれば) 株価は上がり、業績が悪ければ (または、悪くなることが見込まれれば) 株価は下がります。ある時点で株式を購入し、株価が値上がりした時点で売却すれば利益に、値下がりした時点で売却すれば損益となります。
    通常は証券会社、あるいは銀行の投資専門サービス担当が窓口 (brokerage) となり、購入/売却などの手続きを行うことができます。カナダ6大銀行はそれぞれ投資専門窓口を持っていますし、専門会社としてはQuestradeQtradeなどがメジャーです。

    個人で株式投資を行う場合は、当然どの会社の株をいつどれだけ買うか、いつどれだけ売るかというのは個人の裁量でコントロールします。日中マーケットがオープンしている間は常に変動する株価に対して、株価が下がった時点で売ってしまえば当然損益となり、投資した元金が減ることも大いにありえます。株式投資で利益を上げるためには、株式を購入する会社/企業の四半期毎の業績報告や業界の動向に関するニュース記事をこまめにチェックするなど、ある程度以上のコミットメントが必要となります。

    投資信託
    英語では「Mutual Fund (ミューチュアルファンド)」と呼ばれるのが投資信託です。
    個人で株式投資を行う場合は、例えば一人で20社や30社もの株式を購入し管理するのは大変な手間です。Mutual Fundでは、Brokerage内のファンドマネージャーと呼ばれる担当者が、自ら選定した株式をはじめとする複数の投資対象をまとめ、パッケージ (ファンド) として管理/運営します。パッケージに含まれる投資対象の値が上がればそのファンドの値段は上がり、下がればファンドの値段は下がります。
    株式等と同様に、証券会社あるいは銀行が窓口となってファンドを購入/売却することができ、当然購入した時点より値上がりした時点で売却すれば収益に、値下がりした時点で売却すれば損益となります。株式と違い、Mutual Fundは通常その日のマーケットが終了した時点でファンドの価格が決まります。

    ETF (上場投資信託)
    大雑把に「株式と投資信託の間に位置するのもの」と位置づけされるのが、「Exchange Traded Fund (上場投資信託) = ETF (イー・ティー・エフ)」と呼ばれる投資商品です。
    ETF は、通常の投資信託と同様に複数の投資商品がまとめられたパッケージ (ファンド) ですが、通常の投資信託と違い、マーケットがオープンしている間にその値が変動しマーケットがオープンしている間に売買取引が行えます。
    株式や投資信託と同様に、証券会社あるいは銀行が窓口となってファンドを購入/売却することができ、当然購入した時点より値上がりした時点で売却すれば収益に、値下がりした時点で売却すれば損益となります。

    GIC
    GIC (定期預金) を投資商品と位置づけることに賛否はあるかもしれませんが、前述の通り、「Guaranteed Investment Certificates」の略であるGICは、少なくともカナダのパーソナルファイナンス事情においては、投資商品のひとつとして扱われています。最近では、いわゆる単純な利率固定型ではなく、マーケット指標に連動して毎年利率が変動する (ただしマイナスにはならない) 形のGICなども登場し、より投資商品としての側面が押し出されています。
    投資商品として見た場合、株式や投資信託との最も大きな違いは「元本保証」であるという点です。GICの場合は、投資した資金 (元本) が、その最初の値より下がることは絶対にありません。したがって、大きなリターンを望むことができない代わりに、確実に資金を増やすことができる投資先として利用することができます。

Diversify (=分散投資) の重要性

投資に回せるある程度の資金があったとして、例えばその全額をひとつの会社の株式購入に当てたとしたらどうでしょう。ひとたびその会社の業績が悪くなれば、あなたの投資資産は限りなくゼロ近くになることさえありえるわけで、非常にリスクの高い状態にあります。
では二つの会社ではどうでしょう。例えば半分をApple社の株式、もう半分をAmazon社の株式の購入に当てたとします。いいえ、これでも十分なリスク回避とはなりません。ITバブル崩壊のような事態となれば、同業界の両社の株価は同様に下がってしまい、あなたの投資資産は確実に減ってしまいます。
では別業界の企業の株式を組み込むのはどうでしょう。製薬業界大手のPfizer社の株式と、飲料水大手のCoca-Cola社の株式も併せて保有してみました。いいえ、これでもまだ不十分です。アメリカ全土を巻き込むリーマンショックのような不況となった場合には、総じて株価が下がってしまうことでしょう。
では例えばその時、比較的影響の少ない、あるいはアメリカの市場とは直接連動しない中国の会社の株式を保有していたとしたらどうでしょう。または、そもそも投資資金の半分はGICで運用していたとしたらどうでしょう。あなたの投資資産は、複数の要因に依存していることになり、単体の要因による大幅な乱高下を避けることができるのです。
これがリスク分散/分散投資、つまり「Diversify」という考え方です。

そして、この分散投資をある程度のレベルまで自動的に行えるのが、Mutual Fundによる投資ということになります。
上記の通り、Mutual Fundはファンドマネージャーが管理するパーケージ (ファンド) として用意されます。ひとつのファンドの中には、複数の会社の株式、国債、現金、あるいは別の会社の運営するファンド等々、様々な投資対象が含まれ、そのファンド内ですでに分散投資が行われています。ファンドにも種類があり、例えばカナダのマーケット指標に連動するようにデザインされたファンド、アメリカの中小企業の株式を中心としたファンド、ヨーロッパの景気の影響を受けるようにデザインされたファンド...などなど、ひとつのBrokerage内で数十を超えるファンドが用意されていて、これらをさらに複数種類購入することで、さらにもう一段階分散投資ができるということになるわけです。

「投資」と「投機」の違い

投資の種類の考察において、もうひとつの重要なポイントに「『投資』と『投機』の違い」というものがあります。
投資の中でも、短期投資でギャンブル性の高いものが「投機」、といったような説明がされることもしばしばありますが正確ではありません。正確にはその名の示すとおり「『資本』に投資するのが『投資』」、「『機会』に投資するのが『投機』」と理解されるべきです。長期的な企業の展望を見越し、その資本の成長を期待して資金を投じるのが「投資」。相場の変動のみを軸に差益を得ようとして資金を投じるのが「投機」(結果的に「短期投資でギャンブル性の高いもの」となる)。
長期的な資産形成と家計のやりくりを目的とするパーソナルファイナンスにおいては、「投機」は避けるべきアプローチとして理解されるべきです。


カナダでの投資: はじめに

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

「投資」と聞くと、すぐに株やFX、あるいは不動産などを連想し、自分には関係のない世界のハナシ、あるいはリスクが高くギャンブルのようなものと考えて、敬遠してしてしまう人も多いでしょう。しかし、特に未来に向けての資産形成という観点でパーソナルファイナンスを考えた場合、自身の資産の中にいわゆる「投資商品」を組み込むことは、極めて一般的かつ合理的な判断です。
ここではまず、「投資とは何か?」(What)、「なぜ投資をするべきか?」(Why)、「どう投資をするべきか?」(How) という観点から、要点をまとめてみましょう。

投資とは何か?

「投資」という言葉を辞書で引くと
  • 利益を得る目的で事業・不動産・証券などに資金を投下すること。
  • 比喩的に、将来の利益のために金銭を投入すること。
などといった説明があります。
「事業・不動産・証券...」と聞いた時点ですでに尻込みしてしまうかもしれませんが、もう少し単純に言葉の意味だけを捉えてみましょう。
目の前に$10,000の資金があったとします。この資金をただ持っていただけでは永遠に$10,000のまま。代わりに、この資金を「将来価値が上がると予想されるもの」に費やし、未来のある時点で、結果的に$10,000以上の価値にすることが目的。これだけの単純な定義です。
金利がほぼゼロなことが普通になってしまっている日本の銀行の定期預金を鑑みると想像しづらいかもしれませんが、1%~5%の金利で推移しているカナダの定期預金 (GIC) も、立派な投資商品です (実際、「GIC」の「I」は「Investment=投資」の「I」で、投資商品の筆頭としてリストされていることが一般的です)。
  • $10,000の資金を10年満期の定期預金に投下し、10年後確実に$13,000にする
  • $10,000の資金を投資信託購入に投下し、10年後$25,000にすることを期待する
両者の間には「リスク」の程度の違いがあるだけで、定義上はどちらも「投資」行動であることには変わりはありません。

なぜ投資をするべきか?

もちろん資産をより多く増やすことを目的とし、リスク管理をしながらもより高いリターンを求めることも重要ではあります。しかし、ことパーソナルファイナンスというレベルで考えるのであれば、もう一歩下がって、より基本に立ち返った見方からの「なぜ」をまず考慮する必要があります。
前節に「$10,000の資金をただ持っていただけでは永遠に$10,000のまま...」とありますが、厳密に言うのであればこれは正しくありません。消費者物価指数などを指標にするいわゆるインフレ率。カナダにおいても、日本や他の先進国同様毎年2%程度を目標としています。つまり、全てのモノの値段は一年につき2%程度上がることが想定されているわけです。そしてそれは同時に毎年「貨幣の価値が下がる」こと、つまり「同じ貨幣で買える物が少なくなる」ことを意味します。
例えば2020年に$12で食べることができた日本食レストランのラーメン。同じ$12を10年間手に握り続けていたとしたら、2030年にはそのラーメンは食べられません。なぜならその時点でその全く同じラーメンはおそらく$15に値上がりしてしまっているからです。いや、ラーメンだけでなく、同じく2020年に$12だったものは総じて2030年には$15程度になっていることでしょう。つまり、今現在の$12は10年後には$12分の価値が無いわけです。
この「インフレ率に追いつくため」という一点において、あなたの資産は「最低でも年率2%を目標に増やされるべきである」と言えるわけです。そしてそのためには、実質的に投資と言う選択が不可欠となります。

どう投資をするべきか?

カナダにおいては、制度として投資をしやすい環境が非常に整っているといえるでしょう。
目的にあった投資環境の形成という意味において
  • 老後/リタイア後の生活のための資金形成には RRSP
  • 子供の教育のための資金形成には RESP
  • 住居購入のための資金形成には FHSA
  • その他の資金形成には TFSA
といった箱がまずしっかりと用意されています。そして、それぞれにおいて主に投資信託やGIC、あるいは株式への資金投入が容易にできる環境が整っています。
上記4つの「箱」(または「制度」) は、全て運用益が非課税となるという大きなメリットがあり、「Registered Account」と呼ばれる種類のアカウントとなります。まずはこれらの制度を有効に使わない手はありません。各種アカウントをすでに保有しているのであれば、その中で利用できる投資商品を吟味してみましょう。


カナダでの投資: TFSA: Tax-Free Savings Account

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

TFSA (Tax-Free Savings Account) とは、個人の貯蓄を促す目的でカナダ政府が2009年より始めた、課税の免除を柱とした貯蓄支援制度です。18歳以上でSINを有するカナダ在住の全ての人に利用資格があり、一年間につき一定額 (下記参照) の資金を入金 (拠出)することができ、その資金を利用して発生した運用利益に対しての課税を免除する、という制度です。


拠出限度額
2009年$5,0002015年*$10,0002021年$6,000
2010年$5,0002016年$5,5002022年$6,000
2011年$5,0002017年$5,5002023年$6,500
2012年$5,0002018年$5,5002024年$7,000
2013年$5,5002019年$6,0002025年$7,000
2014年$5,5002020年$6,0002026年$7,000
(年毎にインフレ率に応じて調整)
*2015年4月に提出された「Economic Action Plan 2015」により、
2015年の拠出限度額は、前年比ほぼ倍増の$10,000となりました。が、2016年は再度$5,500へと戻されることが決まり、以降も$5,500近辺からのインフレ調整がなされています。


パーソナルファイナンシングにおいて、税金及び節税を意識し、より戦略的に資産を管理する上で、この制度を利用しない手はありません。制度をしっかり理解し賢く資産運用をしましょう。

運用利益を非課税に

通常のSavings AccountやGICにつく利息、株や投資信託 (Mutual Fund) 運用による利益 (Capital Gain)、これらの利益は当然タックスファイリング時には全て収入として申告される必要があり、全て課税対象となります。しかしこれらの運用を「TFSA内で行う」ことによって、そこで得られた利益分を全て非課税とする (=申告しなくてよい収入扱いとする) ことができます。

では「TFSA内で行う」とはどういうことなのでしょう。
「TFSA」の「SA」は「Savings Account」を指しますが、これは便宜上そう名付けられただけで、いわゆる銀行口座の種類としてのSavings Accountとは別のものと考える必要があります。
「TFSA」という、資金をプールできる箱があり、この箱には一年ごとに決められた額の資金を収める(=拠出する)ことができ、この箱の中にある資金をどのように使って運用してもよく、その運用によって得られた利益は非課税になる。
この点をしっかり理解することが、TFSAをより良く理解するカギとなります。
つまりTFSAとしてプールされた資金を、各金融機関が商品として提供する Tax-Free GIC、Tax-Free Mutual Funds、(商品の一つとしての) Tax-Free Savings Account 等を利用して運用することができるということになります。また、証券会社等が提供する Tax-Free 投資口座内で、株式やETFで運用することも可能です。

基本ルール
  • 年間拠出額 (contribution) 制限 -- 例えば2026年なら$7,000 -- を超えて拠出することはできない。
  • 年間の拠出額に満たなかった分は、翌年以降に繰り越しされる。
    例: 2025年 (限度額は$7,000) に$4,000だけを拠出したとする。使われなかった$3,000分は翌年に繰り越しされ、2026年 (限度額は$7,000) の拠出限度額が$7,000+$3,000で$10,000となる。
  • TFSAからの引き出し (withdrawal) はいつでも可能。引き出した分は翌年の拠出限度額に加算される。
    例: 2025年 (限度額は$7,000) にいったん限度額いっぱいの$7,000まで拠出したが、同2025年内に$1,000引き出した。この場合2025年の拠出限度額は変わらず、翌年2026年 (限度額は$7,000) の拠出限度額が$7,000+$1,000で$8,000となる。
注意
  • 年間拠出額の計算は自分で行わなければなりません。CRAは年毎の合計拠出額は記録していますが、拠出の度に合計額をチェックして自動的に制限を超えないよう通知するようなシステムは一切ありません。全て自己管理で拠出額等を管理記録する必要があります。
  • 年間制限額を超えて拠出してしまった場合は、その金額と期間によってペナルティーが科されます。
  • 繰り返しますが、TFSAから引き出しを行った場合でも、その年の拠出額はそのまま変わらず、翌年の拠出限度額に、引き出した分の額が加算されます。
  • TFSAは、どんな場合においても個人名義で管理されます。配偶者間での共同TFSAアカウントや限度額の共有といったコンセプトは一切ありません。銀行口座そのものが共同名義のジョイントアカウントだったとしても、TFSAは個人名義で開設/管理される必要があります。
注意
BC州、NB州、NL州、NS州、NT準州、NU準州、YT準州では、各州個別の「legal age」の定義に関する法律により、TFSA口座を開設できる年齢が18歳ではなく19歳となっています。ただし、18歳時点から発生する拠出限度額のカウントそのものは変わりません。つまり、18歳の時点では口座を開設できないので18歳の年の分の拠出はできないですが、19歳となって口座を開設した時点で、18歳の年の分を含めた2年分の拠出限度額を持っているという扱いとなります。

TFSAの運用先

銀行をはじめとする金融機関は、TFSAの運用先となる各種商品/口座を扱っています。前述の通り、Tax-Free GIC や Tax-Free Mutual Fund、または (商品の一つとしての) Tax-Free Savings Account がそれにあたります。手始めに、Chequing Accountで日々やりとりをしている馴染みの銀行が扱っているTax-Free商品/口座を吟味してみるのもいいかもしれません。

TFSAの運用先は、一つの金融機関の一つの金融商品に限定する必要はありません。複数の金融機関にまたがってでも、一つの金融機関内の複数の商品でも、いくらでも利用することができます。ただし、一年の拠出限度額はあくまで一定。二つのTax-Free商品を利用したからといって、限度額が倍になるようなことはありません。それぞれの商品/口座にいくら拠出したか、しっかりと管理記録して、合計拠出額が制限額を超えないようにしなければいけません。

ちなみに、ひとつのTFSA運用先から別のTFSA運用先に直接資金を動かす場合、これは「引き出し」>>「拠出」という扱いにはなりません。前述した「「TFSA」という、資金をプールできる箱..」という考え方を踏襲してください。ここでは、資金は既に「TFSA」という箱に入っているわけですから、あくまでその中で運用先をやりくりしているだけで、ここで動かす資金が拠出元本分であろうが運用益分であろうが、拠出額制限には全く影響はありません。
すでに「TFSA」という箱に入っている資金を、TFSA外に引き出した場合にのみ「引き出し」と認識され、TFSA外にある資金を「TFSA」という箱に入れる場合にのみ「拠出」として認識され、それぞれ拠出合計額に影響を与えます。

特に希望が無い場合は、Tax-Free Mutual Fundの様に元本保証のない商品や、Tax-Free GICの様に一定期間引き出しが出来ない類 (non-redeemableの場合) の商品を考える前に、まずは手軽に始められる (商品の一つとしての) Tax-Free Savings Account口座を一つ開設してみることをお勧めします。そこでまずTFSAの仕組みや手順を実践的に理解しましょう。その手順をしっかりと踏んだ後に、積極的に他の投資商品を吟味してみるというのが良いでしょう。
重要
前述の通り、「..TFSA内で行う投資行為においては、そこで得られた利益分は全て非課税」というのが根本のルールですが、一点注意することがあります。それは、

TFSA内とは言え、デイトレーディング (またはデイトレーディングとみなされる程度に極端に頻度の高い売買行為) を行った場合は、CRAにより『ビジネス行為』とみなされることがあり、その場合はキャピタルゲインに対し所得税の徴収が行われることがある

という点。

「デイトレーディング」そのものの定義に関して議論の余地はあるものの、基準はあくまでCRA側の判断で、「(個別株式銘柄等を) 保持していた期間」「売買の頻度」「売買の量/金額」「売買行為に費やされた時間量」「長期保持/短期売却の意図」等のファクターを元に、監査の結果「ビジネス行為」とみなされた場合は、本来のTFSAの目的を逸脱した行為と判断され、所得税の徴収が行われる可能性があります。

近年、ウェブ/アプリ環境の利便性は益々上がり、株式やETF投資への参入や、それらの売買行為を行うことに関するハードルは益々低くなっています。伴って、自覚のないままに (CRAの定義によるところの) 「高頻度の売却行為を短期間において実行」してしまった結果、CRAからの監査が入ってしまった...ということも起こりえます。政府としてのTFSAの元来の目的は、個人の貯蓄を促すこと。この点をしっかりと理解した上で、「TFSAでデイトレはダメ」というルールを必ず守るようにしましょう。

TFSAの考え方

通常のSavings Accountの利息は課税対象になります。だとしたら、ある程度のまとまった資金がある場合、通常のSavings Account口座よりも先にTFSAのSavings Accountに入金すべきでしょうか。答えはもちろんYesです。年間の拠出額にまだ空きがあるにも関わらず、資金をTax-Freeではない口座で運用するということは、課税対象資金を不必要に増やし税額を不必要に上げていると考えることができます。まずは拠出限度額までしっかりTax-Freeの口座に資金を拠出し、それ以上の余剰資金を、Tax-Freeではない口座でやりくりするようにしましょう。


カナダでのリタイアメント: RRSP: 拠出

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

RRSP への拠出

自分の拠出限度額も理解できたところで、実際の拠出額あるいは拠出のサイクル等について考えてみましょう。

RRSPの様な積み立て型の貯蓄では、毎給与から自動的に天引きする、あるいはスケジュールを決めて自動的に振込みを行うなどの方法で、家計のやりくりに組み込んでしまうのが最も有効な方法です。家計に影響のない範囲で、出来る限りの拠出をすることが理想です。もちろん、家計が許すのであれば、年間拠出限度額いっぱいまでの拠出が出来ることが理想です。

前述の通り、RRSPのメリットのひとつは、タックスファイリング時にその拠出額をそのまま控除として利用できるという点です。この点を鑑みると、長期的に見ても短期的に見ても、できる限り毎年拠出限度額いっぱいまでの拠出を目指すということは、非常にメリットの大きい努力目標であると言えます。RRSPの制度もまた、拠出限度額いっぱいまでの拠出を促すような形で、各種期限日等が設定されているといっても過言ではありません。
暗に、
1. 年間を通じて一定額を拠出し続ける
その上で、タックスファイリング直前の時点で、
2. 拠出限度額に満たない分を追加で拠出をする
という方法を取れるように期日が設定されています。これらの点を踏まえ、RRSPの拠出のサイクル/スケジュールに関して考察してみましょう。



RRSPでは、「年間」拠出額と謳っていながら、実際の一年のサイクルはいわゆるカレンダーイヤー (1月~12月) とはなりません。該当年に対する拠出期間は、3月初めから翌年2月末までの一年となります。
*実際は、当該年の2月最終週の曜日の構成によって数日ほど伸ばされることがあります。大まかに、毎年2月最終日が拠出締切り日であると覚えておけば問題ありません。

例 (直近3カ年):
2024年分のRRSPの拠出期間: 2024年3月1日~2025年3月3日
2025年分のRRSPの拠出期間: 2025年3月4日~2026年3月2日
2026年分のRRSPの拠出期間: 2026年3月3日~2027年3月1日
これは、4月末日に設定されているタックスファイリングの締め切り日との兼ね合い等を踏まえ、理にかなっているスケジュール設定であると言えます。
例に沿って考察してみましょう。
  1. 年間所得額が$85,000程のAさん。2025年分のタックスファイリングを早めに終え、2026年3月半ばに届いた「Notice of Assessment」によると、2026年分のRRSP拠出限度額は「$15,000」となりました。

    RRSP(2026年)年間拠出限度額 = $15,000

  2. グループRRSPを提供しているAさんの勤務先では、月二度(毎15日と月末日、年合計24回)給与が振り込まれる形態です。Aさんは毎給料日に、$400をRRSPに拠出するように設定しています。

    2026年3月3日から2027年3月1日までの自身の拠出額 = $400 x 24 = $9,600

  3. Aさんの勤務先のグループRRSPでは、年収の5%を自動的にMatchしてくれるというベネフィットがあり、毎給与に分けてその額がRRSPに拠出されるようになっています。

    2026年3月2日から2027年3月1日までの雇用先からの拠出額
    = ($85,000 x 5%) / 24 x 24 = $4,250
したがって、Aさんのこの時点での2026年分の拠出合計額は、
$9,600 + $4,250 = $13,850

となり、拠出限度額に達するまであと
$15,000 - $13,850 = $1,150

が余っているということがわかります。

さて、上記のような拠出を行っている設定で、2027年2月頃 (2026年分の) タックスシーズンを迎えるとしましょう。

2026年分の所得税計算にあたり、課税対象所得額を少なく抑えるためにRRSPによる控除を最大限に利用しようとするAさんは、上記の計算により、拠出限度額にまだ$1,150の空きがあることを知っています。
そこでAさんは、毎給料日からの拠出とは別に、$1,150を Savings Account から工面しRRSPへ追加拠出することにしました。

合計拠出額 = $9,600 + $4,250 + $1,150 = $15,000
考察
Aさんが Savings Account から捻出してでも追加拠出をしようと決めたのには当然理由があります。利用しているタックスファイリングのソフトウェアによる計算によると、$1,150の追加拠出をすると、その結果タックスリターン額が$2,500から$3,200 (あくまで例) にまで増えることがわかりました。その金額差を鑑み、Savings Account を切り崩してでも追加拠出をする価値があると判断したわけです。Aさんは、リターン額が振り込まれた際には、その中から$1,150を Savings Account に戻しておくつもりでいます。
また、当然ですがこの$1,150の追加拠出分は「支出」されたわけではありません。RRSPに拠出されたわけですから、あくまで自分のお金です。
つまりこの例では、結果的に一時的に$1,150を移動させただけで、$700もの単純な利益が生まれているということが言えるのです。

注意点

タックスファイリングの期限が4月末日であるのに対し、RRSPの拠出期限は上記の通り2月末(または3月初平日)です。したがって上記の様なシナリオを踏襲する場合には、タックス計算の作業を出来るだけ早く開始し、追加拠出の金額を割り出した上でRRSPの拠出期限の前までに追加拠出を完了させる必要があります。

まとめ

上記の例で示した$700という差益は、決して極端な例ではありません。RRSPへの拠出による控除というのは、リターン額に最も大きな影響を与えるファクターのひとつです。したがって、予算が許す限り多くの、また拠出限度額に出来るだけ近い拠出を達成することは、短期長期両方の視点からも、大変メリットのあるやりくりであると言えるのです。


カナダでのリタイアメント: RRSP: 拠出限度額

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

RRSP の拠出限度額

晴れてRRSPへの拠出ができる環境が整ったとして、次に熟慮するべきはその拠出額です。自分の将来のための貯蓄ですから、現在の家計に影響のない範囲でできる限りの額を拠出するに越したことはありません。しかし税制優遇措置があることに伴って、RRSPの拠出には年間限度額が設定されています。
1. あなたの前年の所得額の18%の額

2. 毎年CRAによって設定される年間拠出限度額 (下記参照)
を比べて
少ない方の額
= あなたのその年のRRSP拠出限度額

設定年間拠出限度額 (間近5年)
2022年2023年2024年2025年2026年
$29,210$30,780$31,560$32,490$33,810
(年毎にインフレ率等に応じて調整)

少し掘り下げてみましょう。
2026年の分のRRSPへの拠出限度額を例にとってみるとします。
  • 前年2025年の所得額が例えば$100,000だったとすると、その18%は$18,000
  • 2026年の設定限度額は$33,810
  • $18,000の方が断然少なくなりますので、結果2026年分の拠出限度額は、$18,000となります。
もう少し掘り下げてみましょう。
CRAが示す毎年の設定限度額というのは、かなり高めに設定されていることがわかると思います。例えば同じ2026年を例にとると、前年2025年の所得額が$187,833.33以上となって初めて、その18% (=$33,810) が設定限度額を上回るということになります。つまり、結構な高額所得者 (年収 $187,833.33以上) となって初めて、設定限度額の方が適用されるケースがみられるということになるので、おそらく多くの人にとっては「前年の所得額の18%」の方が適用される場合がほとんどでしょう。

未使用限度額の繰り越し
ある年において、その年の年間拠出限度額いっぱいまでの拠出をしなかった場合 (つまり拠出額にまだ空きがあった状態でその年の分への拠出期限が終わった場合)、その使われなかった分の額は、翌年以降へと繰り越しすることができます。

拠出限度額の確認

さて、上記の通り拠出限度額の割り出し方 (割り出され方) を示してきましたが、ことRRSPに関しては、それらはあくまで知識として理解しておく程度で済ませて問題ありません。なぜなら、最終的かつ正確な拠出限度額は、毎年CRA側が「Notice of Assessment」を通じて、それを示してくれるからです。
タックスファイリング」の項でも示されている様に、ある年においてタックスファイリングを適切に行いそれが無事終了した時点で、CRAから「Notice of Assessment」という書類が発行されます。その書類下部にはRRSPのセクションがあり、当該年分の拠出限度額、合計拠出額および未使用額等の計算が示され、翌年のRRSPへの拠出限度額がはっきりと明記されます。
*CRAサイトのMyAccountページを通じても、この額は常に簡単に確認することができます。

当該年の拠出限度額を常に正確に把握し、限度額を超えて拠出をすることのないようにしましょう。またこの額の変動にも毎年注意を払い、拠出額 (Group RRSPなら毎給与からの捻出額) の調整などに利用しましょう。


カナダでのリタイアメント: RRSP: 口座開設

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

RRSP 口座

RRSP の口座の種類、口座を開設する際の考え方等についてまとめてみましょう。

Group RRSP (グループRRSP)

ある程度の規模の雇用主の元で働いている場合は、雇用主がいわゆる「Group RRSP」を福利厚生の一部として提供している場合があります。これは、雇用主が特定の金融機関と提携していて、会社を通じて社員にRRSPの口座を持たせ、給与の一部から希望の額を自動的にRRSPに拠出することができるという仕組みです。
この場合は、特に個人で口座を開設する必要はなく、全てが人事部 (HR) を通して行われるのが一般的でしょう。毎月/隔週の給与から何ドルあるいは何%をRRSPに拠出するように設定するのか、またその提携先の金融機関が提供する運用方法 (主に投資信託など) の中から何をどう選択するのかなどは、もちろん自らが設定することができます。
雇用主からのMatch (積み増し)
Group RRSPでは、雇用主がRRSPへの拠出の積み増し (Match) をしてくれることが多くあるということが、最大の利点です。例えば、自らが毎給与時に拠出する額と同額を雇用主が拠出してくれる (100% Match)、あるいは年収に対して決まったパーセント分を、雇用主が毎給与時に拠出してくれる...など、Matchのルールは様々ですので、まずは雇用先のHRに、「Matchは提供されているのか」だとしたら「どのようなルールとなっているのか」という点を確認しましょう。
確実に言えることは、もし雇用先がMatchを提供している場合には、絶対にこれを利用するべきであるという点です。Matchとは、リタイアメントの資金を雇用主が給与とは個別に援助してくれているシステムであると理解することができます。ルールを理解し、最大限のMatchを受け取れるよう努力をしましょう。

Individual RRSP (個人RRSP)

雇用主が提供するGroup RRSPとは別に (雇用主を通してGroup RRSPをすでに所持しているとしても)、Individual RRSPとして各種金融機関に個人RRSP口座を開設することはいつでも可能です。各種金融機関は、TFSAやRESPなどと同様に、口座の種類のひとつとしてRRSPを扱っていますので、新規口座を開くのと似たような手続きで、RRSPの口座を開設することができます。
個人RRSPの運用は、各種金融機関が提供する投資商品を通して行うことになります。したがって、投資商品そのもの好みを元に、金融機関を選択することも出来るでしょう。また、日々すでに取引をしている銀行にRRSP口座を開けば、拠出手続きやポートフォリオの管理なども比較的スムーズに行えるでしょう。

Group RRSP vs. Individual RRSP

Group RRSPとIndividual RRSPを使い分ける、あるいは両方所持することに利点はあるのでしょうか。
  • 雇用主がGroup RRSPを提供してくれていて、ましてMatchを提供してくれている場合は、RRSPに関しては全てGroup RRSPを通して拠出及び管理を行うことが良いと言えるでしょう。
  • Group RRSPを通してMatchを最大限に受け取っている上で、どうしてもIndividual RRSPを通してでしか利用できない魅力的な投資商品が別にある場合などに限っては、あえてその金融機関にIndividual RRSP口座を開くことも良いでしょう。
  • 転職や離職に伴って、それまでの雇用主が提供するGroup RRSPを利用できなくなるような事態となることもあるでしょう。その場合には、Group RRSP口座からIndividual RRSP口座に移行する必要があります。頻繁に転職をするような境遇にいる場合などは、手続きの面倒さを理由に、Individual RRSP口座のみの所持を好む場合もあるでしょう。だとしても、それだけの理由を元に、雇用主からのMatchを逃すというのは、あまりに勿体のないハナシです。
リタイアメント資金の捻出と積み立てという、長期的なゴール/目的を見据え、適切な選択をするよう心がけましょう。

次項で詳しく触れますが、年毎に設定されるRRSPの拠出限度額は常に個人で把握しておく必要があります。当然、複数のRRSP口座を所持しているからといって、拠出限度額が増えるようなことは一切ありません。拠出額の管理という意味においても、むやみ口座を増やしてややこしくすることなく、ある程度まとまったかたちで管理できることが理想と言えるでしょう。


カナダでのリタイアメント: Registered Retirement Savings Plan (RRSP)

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

Registered Retirement Savings Plan (RRSP)

RRSPとは、老後/引退後の為の資金を形成することを支援する、各種税制優遇措置付き登録制資金形成制度です。「就労所得がある」こと、そして「(最初の拠出をしようとしている時点から見て) 前年分のタックスファイリングを済ませている」ことが、RRSPを開設する、または拠出を行う為の条件となります。
各種金融機関、または多くの場合、雇用先が提携する金融機関を通してそのアカウント/口座を開設し、年毎の拠出制限額を鑑みながら、継続的に拠出を行うことでその資金を形成していくことになります。

RRSPのメリット/デメリット、あるいはそもそも「RRSPをはじめるべきか否か」という点について、まとめてみましょう。

RRSPのメリット

RRSPに関しては、3点、大きな税制上の優位点を理解する必要があります。
1. タックスファイリング時の控除
比較的短期的な視点でおそらく最も影響のある利点となるのは、「RRSPへの拠出額は、タックスファイリングの際にそのまま控除として使える」という事実でしょう。「税金」の項目でも触れたとおり、ここで言う控除 (deduction) とは、総所得額から直接引き算のできる項目であり、多くの場合、おそらく最終的なタックスリターン額に最も影響を与える項目のひとつとなります。
もちろんRRSPの拠出限度額 (後述) は個々によって違いますので一概には言えませんが、例えば$10,000~$20,000辺りの限度額に対して、満額の拠出をするのと、一切の拠出をしないのとでは、タックスリターン額に数千ドルの差が出ることは想像に難くありません。

2. 運用益が非課税
RRSPへ拠出された資金は、RESPやTFSAなどと同様、各種金融機関が提供する投資商品 (元本保証のSavings AccountやGIC、あるいは投資信託や株式など) を通じて運用することとなります。この運用で得られる利子所得や運用益などは、すべて非課税となります。

3. 所得税の先延ばし
RRSPへ拠出された分の額は、その年の所得額への控除に使えるわけですから、事実上その分にかかる所得税を免れることになります。老後/引退後にRRSPから資金を引き出す時には、それらは所得とみなされその時点で所得税が適用されます。多くの場合老後/引退後は所得が低くなり、低い所得税率区分が適用されることが予想されるため、結果としてその差分だけ得をする、という考え方です。

RRSPのデメリット

RRSPは、「リタイアメントの時点まで、一切引き出す予定がない」ことを前提に、その資金を形成することを支援する制度です。その本来の制度/目的通りに理解し利用している限り、基本的に大きなデメリットはありません。目的を逸脱し、リタイアメント以前に (他にメインの収入ソースがまだある時点で) 引き出しを行ったりした場合、またはリタイアメント後でも、持続的な収入ソースとして利用せずに一括での引き出し (cash-out) を行ったりした場合などには、「引き出し額はそのまま所得として扱われる」というシステムの特性上、「節税の機会を無駄にする」という結果となり、それがデメリットととなります。
リタイアメント前に非課税ででRRSPから引き出しができる例外として、初めて住宅を購入する際の資金 = Home Buyers' Plan (HBP) と、自身あるいは配偶者の就学のための資金 = Lifelong Learning Plan (LLP) とが、制度として認められています。

RRSPをはじめるべきか否か

それでは、例えば現時点で20代、30代、40代..でカナダに在住しているとして、今後数十年間あるいは老後/引退後、そのままカナダに在住し続けるかが確かではないといった場合、RRSPを始めるべきなのでしょうか。
リタイアメント資金形成をはじめるべきか否か >> 常にYES!
現在の年齢、あるいは将来の環境にかかわらず、リタイアメント後の資金を準備することの必要性に関しては、答えは常にYesです。また、リタイアメントプランそのものに対する考え方として、前述の「労働収入があるうちに、その一部をリタイアメント後の資金として捻出しておく」という方法論は、これもまた将来の環境にかかわらず、答えは常にYesです。したがって、まず現時点でリタイアメント後の資金形成の準備を始めていないのであれば、それは今すぐに始められるべきものとなります。
RRSPによってリタイアメント資金形成をするべきか否か >> ほぼYES!
では、それをRRSPを介して行うメリットはなにか。それは、上記の3つの税制優遇措置に他なりません。所得税の控除に関しては、カナダでタックスファイリングをし続けている限り、1年単位でその大きな恩恵を受け続けることが出来ます。他2点に関しては、その恩恵を受けるに際し、リタイアメント時にどこに居住しているかというのはほぼ無関係です。したがって、例えば数年内にカナダを離れることが確定していて、長期的な観点から (上記「デメリット」を鑑みて) その恩恵が最小限であると判断されるような場合以外であれば、リタイアメント資金形成には、RRSPがもっとも有効な方法であると言う事が出来ます。