RRIFとは
Registered Retirement Income Fund (RRIF) とは、リタイア後のために貯蓄/運用してきたRRSP (Registered Retirement Savings Plan) の資金を、リタイア後の収入として活用するために利用される制度です。リタイアをする (RRSPから資金を収入として引き出し始める) と決めた時点で、RRSPからRRIFへとその資金を「変換」することでRRIFを「開設」することとなり、RRIFのルールに基づき税制の優遇を受けながら効率的な資金の引き出し/取り崩しを行うことが出来ます。一般的なシナリオを例に挙げつつ、手順を追って理解していきましょう。
1. 「RRSP」から「RRIF」への変換
「RRSPから資金を収入として引き出し始める」と決めた時点においてまず行うことは、その資金を「RRSP」から「RRIF」に「変換」させることです。これは、RRSPを保持している金融機関に対しその旨を伝えることだけで実行することが出来ます。あえて「変換」という言葉が使われるのには理由があります。この「変換」とはまさにただその「箱の名前を換える」だけの手続き。資金を実際に移動させることもなければ、投資内容を変更する必要も (つまり売却や利益確定をする必要も) ありません。
また、この「変換」はいつでも行うことが出来ます。唯一のルールは「71歳の誕生日を迎えるその年の終わりまでに RRSP内の資金からの『変換』を完了しなければけない」ということだけ。
2. 「RRIF」からの引き出し
RRIFへと変換された資金は、自由な頻度で引き出しを行うことを設定できます。ここで言う「引き出し」とは、RRIFの口座から例えばChequing口座に資金を移動させること。つまりまさに「自分自身に給与を与えるかの様に、資金を移動させること」。細かなルールは金融機関によりますが、例えば毎月/毎四半期/年一回..等、その頻度を選択することが出来ます。また、引き出す金額についても自分自身で設定できます。例えば CPP (退職者年金) やOAS (老齢年金) 等を既に受け取っている場合などは、それらの支給額も踏まえた生活費を鑑み、RRIFからの引き出し額を自身で決めることが出来ます。
3. 最低引き出し額
引き出し額に上限はありません。ただし下限、つまり「最低引き出し額 (minimum withdrawal)」があります。最低引き出し額は、年齢を元に定義された最低引き出し率を元に計算されます。
年齢 | 最低引き出し率 (%) | |||||||||
55歳 | 2.86% | 65歳 | 4.00% | 75歳 | 5.85% | 85歳 | 8.51% | 95歳+ | 20.00% |
56歳 | 2.94% | 66歳 | 4.17% | 76歳 | 5.98% | 86歳 | 8.99% | ||
57歳 | 3.03% | 67歳 | 4.35% | 77歳 | 6.17% | 87歳 | 9.55% | ||
58歳 | 3.13% | 68歳 | 4.55% | 78歳 | 6.36% | 88歳 | 10.21% | ||
59歳 | 3.23% | 69歳 | 4.76% | 79歳 | 6.58% | 89歳 | 10.99% | ||
60歳 | 3.33% | 70歳 | 5.00% | 80歳 | 6.82% | 90歳 | 11.92% | ||
61歳 | 3.45% | 71歳 | 5.28% | 81歳 | 7.08% | 91歳 | 13.06% | ||
62歳 | 3.57% | 72歳 | 5.40% | 82歳 | 7.38% | 92歳 | 14.49% | ||
63歳 | 3.70% | 73歳 | 5.53% | 83歳 | 7.71% | 93歳 | 16.34% | ||
64歳 | 3.85% | 74歳 | 5.67% | 84歳 | 8.08% | 94歳 | 18.79% |
当該年における1月1日時点でのRRIFの残高に対し、当該年齢の最低引き出し率を掛けた値が、その年の最低引き出し額となります。
66歳となる年の1月1日の時点でのRRIFの残高が $750,000
66歳の年に対して適用される最低引き出し率 (%) = 4.17%
よってこの年の最低引き出し額は
$750,000 x 4.17 % = $31,275
引き出し頻度の設定に関わらず、一年においてこの最低引き出し額分の額は必ず引き出しを行わなくてはいけません。
4. Withholding Tax
最低引き出し額ピッタリの額を引き出したとすれば、実際に受け取る額はピッタリそのままその額です。ただし、もしこの最低引き出し額よりも多くの額を引き出した場合は、その超過分に応じて設定された Withholding Tax が適用され、その分が引かれた額を受け取ることになります。最低引き出し額超過分へのWithholding Tax | |
超過額 | Withholding Tax率 (%) |
$5,000以下 | 10% (ケベック州 5%) |
$5,001~$15,000 | 20% (ケベック州 10%) |
$15,001以上 | 30% (ケベック州 15%) |
66歳での年初の残高 ($750,000) と最低引き出し率 (4.17%) をもとに計算された最低引き出し額が $31,275 とする
対して、実際の引き出し額を $40,000 とすると
超過額: $40,000 - $31,275 = $8,725
$8,725 の内、最初の $5,000 の超過分への Withholding Tax: $5,000 x 10% = $500
$8,725 の内、$5,001~$15,000 の超過分への Withholding Tax: ($8,725 - $5,000) x 20% = $745
Withholding Tax 合計: $500 + $745 = $1,245
よって実際の受け取り額: $40,000 - $1,245 = $38,755
このWithholding Taxの徴収は、金融機関が引き出しを行う時点で「Withholding Taxが引かれた額だけしか渡さない」という形で行われます。
5. 課税対象所得
忘れてはいけないのは、超過額の有無に関わらず、最低引き出し額と超過額を含めた受け取り額全てが最終的に課税対象の所得となるということ。つまり
- 最低引き出し額分は、Withholding Taxを避けられたとしてもあくまで課税対象所得
- 超過額分は、Withholding Taxが引かれた上にさらに課税対象所得
大まかなルールとしては以上の通り。しかしこれだけのルールだけでも、毎年..
- 十分な生活資金となる額を、
- 節税をしながら、
- 資金が尽きないように、
- 自分がいつ亡くなるかはわからないという条件の中で
実質的にはさらにここに...
- RRIF内の資金は (変換前のRRSPの状態の時と同様に) 非課税で運用し続けられる
- RRSP内の資金全てを一度にRRIFに変換する必要はない (RRSPとRRIFを同時に保持できる)
- 71歳までの間であれば、RRIFからRRSPに資金を戻すことも可能
リタイアメント全般、またはRRSP資金に関するプランや考え方は人それぞれ。RRSPの資金額によっては65歳よりも早い時点でのリタイアを考える人もいるでしょうし、仕事や生活の状況を踏まえてできる限りリタイアは先延ばしにしてRRSP資金を最大限増やし続けたいと考える方もいることでしょう。
RRIFの制度と、次に取り上げるAnnuity、それぞれのルールと利点等をしっかり理解し、自分に合った「リタイア後の収入」のやりくりを行うようにしましょう。