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カナダでの投資: TFSA: ケーススタディ1

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

一度理解してしまえばそれほど複雑ではないTFSAですが、比較的新しい制度ということもあって、ややこしい!と思われているのも事実。ここでは、ケーススタディという形で、実際にいくつかの例を挙げながら理解を深めていきましょう。

ケーススタディ1 - 堅実な貯蓄家、Aさんの場合

2010年10月にワークパーミットで日本からカナダにやってきた20代のAさん。数ヵ月後、仕事も落ち着いて、貯蓄を意識しだした頃にTFSAのことを知る。今まで普通のSaving Accountにそれなりに貯金してきたけど、僅かとは言え税金で損していると知って、勉強もかねてTFSAをはじめてみようと一念発起。

  • Aさんがカナダにやってきたのは2010年ということは...
    残念ながら全くカナダとの関わりの無かった2009年は、税制上「non-residents」となり、2009年分の設定拠出額$5,000はAさんには不適用。拠出できるのは2010年分の$5,000からとなります。

  • カナダに来たのは2010年の10月。僅か3ヶ月だけだけど、2010年分はそのまま全額使えるの?
    もちろん。たとえ半年以下だとしてもカナダに在住していれば、税制上の定義で言う「non-residents」にはあたらない為、TFSAのルール上、その年分の拠出の資格があります。

  • TFSAのアカウントを開こうと思い立ったのは既に2011年になってから。2010年分の拠出はムダにしちゃったってこと?
    いいえ。2010年分は単純に拠出が無かったと扱われるだけで、そのまま2011年の拠出に繰越し。2011年時点での拠出可能額が、$5,000+$5,000で$10,000になるだけのこと。

仕組みをある程度を理解したところで、早速馴染みの銀行でアポイントメントをとって、TFSA口座開設の相談。オンラインでも出来るけど、せっかくなのでアドバイザーに直接しっかり話を聞きながら、投資先などを選別。

  • 投資というとちょっと怖い気もするということで、堅実なAさんは一切リスクの無い (銀行の商品のひとつとしての) Tax-Free Saving Account (年利率1.75%) とTax-Free GIC (2年満期年利率2.5%) を選択。アドバイザーはMutual Fund (投資信託) も薦めてきたけど、初めてなのでとにかく安心確実な商品のみを選ぶということで、丁重にお断り。

  • 今までコツコツ貯めてきて、今後も特に使う予定の無い貯金がちょうど$6,000程あったので、この中から$5,000をTax-Free GICに、$1,000をTax-Free Saving Accountに振り分け。

  • 毎年拠出額限度まで拠出できればいいけど、そこまでの余裕は無いので、毎月$300ずつをChequing AccountからTax-Free Saving Accountに自動的に拠出させる様に設定。これで、最低でも毎年$3,600は拠出。

2011年1月から上の条件で拠出をはじめたAさんのその後は、以下の表の通り
(2014年年始時点まで)
 200920102011201220132014
設定拠出限度額-$5,000$5,000$5,000$5,500$5,500
前年未使用分の繰越し額
(前年の⑤)
-$0$5,000$400$1,800$3,700
合計拠出限度額
(①+②)
-$5,000$10,000$5,400$7,300$9,200
拠出額-$0$9,600$3,600$3,600
未使用拠出額
(③-④)
-$5,000$400$1,800$3,700

2009年
  • 資格も無く拠出も当然無いので、一切の手続き無し。
2010年
  • 資格はありながらもTFSA口座開設前なので、拠出は一切無し。したがって、拠出限度額$5,000一切未使用のまま翌年に繰越し。
2011年
  • 前年繰越分$5,000と新規分$5,000を含めて、限度額は$10,000。新規開設のTax-Free Saving Accountに$1,000、Tax-Free GICに$5,000、さらに1月から毎月$300ずつ拠出で、年間の合計拠出額は$9,600に。使われなかった$400は翌年に繰越し。
2012年
  • 前年繰越分$400と新規分$5,000を含めて、限度額は$5,400。毎月$300ずつ拠出で、年間の合計拠出額は$3,600。使われなかった$1,800は翌年に繰越し。
2013年
  • 前年繰越分$1,800と新規分$5,500を含めて、限度額は$7,300。毎月$300ずつ拠出で、年間の合計拠出額は$3,600。使われなかった$3,700は翌年に繰越し。
2014年
  • 前年繰越分$3,700と新規分$5,500を含めて、限度額は$9,200。
考察
純粋に余剰資金による貯金用と割り切ってTFSAを利用しているAさんは、これまで一切引き出しも無し。月$300という無理のない自動拠出設定で着実に資産を増やし、実質3年間での拠出合計は$16,800。もちろんそれは元本分だけで、GICの運用益が (2年満期後同等のGICを続けたとして) 3年間でおよそ$384 ($5,000 x 2.5%で複利で3年)、Saving Accountが3年間で元本合計$11,800のところ利息分合計がおよそ$334 ($1,000開始で毎月$300入金、年利1.75%で3年間)。合計$718程が丸々非課税の利益となります。
毎年限度額に満たない拠出なので、繰越額は増える一方。これは、ボーナスなどの臨時収入をまとめて追加拠出する時の為にとっておいても良いですし、今後余裕があれば月毎の自動拠出額を増やすのも手でしょう。
どちらにしても、当分はいわゆるTax-FreeではないSaving AccountやGICをあえて利用する必要はなく、今後も積極的にTFSAを利用して非課税の恩恵を受け続けるべきでしょう。