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カナダでの仕事: 給料明細 (パートタイム)

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

例えば主婦業の傍らパートタイムで仕事を持っている場合、あるいはワーキングホリデー環境で、学業の傍らアルバイトをしている場合など、就労所得としては比較的少額の収入を得ている場合などは、その給与明細の内容も大きく変わってきます。
本項では、いわゆるパートタイムでの就労でよく見られる給与明細の中身について、理解を深めてみましょう。(フルタイムの場合はこちら >> 給料明細)

Earnings / 支給+勤怠

フルタイムの場合と同様、基本給 (Regular) に始まり、時間外手当 (Overtime) など、天引き前のすべての支給額分はこの項目にまとめられて提示されます。
時給換算の雇用形態の場合は、時給額 (Rate) と就労時間 (Hours) が明確に示されます。各項目ごとに、当該のペイピリオド毎の支給額と、その時点までの年間支給合計額 (YTD: Year to date) が示されているのが一般的です。

Deductions / 控除

所得税、CPPとEIの徴収額など、支給額分から引かれる全ての項目は、この項目にまとめられて提示されます。

  • 所得税/Income Tax
    パートタイムで就労し給与を得ている場合は、年間での支給額合計が、年毎に設定される「Basic Personal Amount」を越えているか否かという点が重要になります。例えば2024年であれば$15,705。この金額以内の支給額であれば、タックスファイリング時にPersonal Amount クレジットによって相殺されるため、結果的に所得税は発生しません。
    日本でよく言われる、いわゆる「パート所得:『103万円』の壁」と、基本的には同じ考え方です。ただしカナダの場合は、インフレ率等に応じてこの金額が毎年調整されるので注意が必要です。

    Basic Personal Amount (最近5年間)
    2024年$15,705
    2023年$15,000
    2022年$14,398
    2021年$13,808
    2020年$13,229

    年間を通しての合計支給額が「Basic Personal Amount」を超えるか否かは、年内の任意の時点では分からない場合があります。そのため通常は、一回の給与支給サイクル (通常2週間または半月) ごとに、「その支給額を一年間通してもらい続ける」と仮定して、その都度みなし所得税の計算及び徴収が行われます。
    例:
    2023年9月から時給$17.00のパートタイムのアルバイトを始めたワーホリ学生Aさん。最初の半月 (1日~15日) は学校も始まる前で時間もあり、張り切って合計40時間に迫るほど働いたため、支給額が$680ほどになりました。
    この支給額を元に1年間の想定合計支給額を計算すると、$680 x 24 = $16,320 となり、2023年の「Basic Personal Amount」額 ($15,000) を超えるため、所得税の徴収が発生します。
    9月から働き始めたので、実際の2023年(12月まで)の支給額合計は$15,000を超えないと分かり切っているとしても、該当の給与サイクルのみを元にみなし所得税が計算されるため、この半月の給与に対しては、相応の所得税が引かれます。

    学校も始まり、その後の半月 (16日~30日) は就業時間も週15時間程。合計支給額も$500程度で、これだと1年間の想定合計支給額は $500 x 24 = $12,000 となり、「Basic Personal Amount」額を超えません。したがって、後半半月分の給与では所得税が一切引かれません。
    その後も、同程度の支給額を維持している限り、半月ごとの給与から所得税は一切引かれません。

    CPP (Canada Pension Plan)
    支給額と、年毎に設定される「Basic exemption amount (2024年なら$3,500)」と「Employee and employer contribution rate (2024年なら5.95%)」とを元に計算される額が、支給回ごとに引かれます。
    例 (2024年):
     - 半月分の支給額: $700
     - 2024年のBasic exemption amount: $3,500
     - 2024年のEmployee and employer contribution rate: 5.95%

    [($700 x 24) - $3,500] x 5.95% / 24 = $32.97

    CPP徴収額 = $32.97
    パートタイムの場合は、徴収額の合計が「Maximum annual employee and employer contribution (2024年なら$3,867.50)」に達することはまれなので、年間を通してその都度計算された額が徴収されます。

    EI (Employment Insurance)
    支給額に対し、年毎に設定される「EI premium rates (2024年なら1.66%)」をかけた額が、支給回ごとに引かれます。
    例 (2024年):
     - 半月分の支給額: $500
     - 2024年のEmployee and employer contribution rate: 1.66%

    $700 x 1.66% = $11.62

    EI徴収額 = $11.62
    パートタイムの場合は、CPPと同様に、EIの徴収額の合計が「Maximum annual employee premium (2024年なら$1,049.12)」に達することはまれなので、年間を通してその都度計算された額が徴収されます。

Net Pay / 差引支給額

EarningsからDeductionsを引いた金額が、いわゆる手取り額となって支給されます。

ある支給回において所得税の徴収が発生したとしても、年間での支給額合計が「Basic Personal Amount」以下となれば、それは「本来支払わなくてよかった税金」扱いとなり、タックスファイリングをすることでしっかりと戻ってきます。
各項目に対して示される年間合計額 (YTD: Year to date) 、また所得税徴収の有無と仕組みをしっかり理解し、タックスファイリングへと備えられるよう勤めましょう。
何らかの理由で間違った数字が示された場合など、そもそもその仕組みを理解していなければ、指摘をすることさえできません。この点は、特にワーホリ環境などにおいては、雇用主との信頼関係の構築という意味においても、とても大切なことです。
自らの生活の基盤となる「収入」の詳細です。しっかりと理解するよう勤めましょう。


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