「家計簿でしっかり管理したいけど続かない...」
「ネット上にはいろいろな情報があるけど、どれも自分には合わない...」
「そもそもカナダでは、日本とは勝手が違ってよくわからない...」
などなど..、様々な理由から、しっかりとした貯蓄管理ができていない方々も多いと思います。
貯金のイロハとして、
- 「貯金の目的/ゴールをハッキリさせよう!」
- 「自動引き落としで、自動的に貯めよう!」
- 「月々の支出をしっかり把握しよう!」
そこで本項目では、貯蓄そのものに特化した方法論ではなく、パーソナルファイナンス的視点、つまり自分の資産の全体像をしっかりと掴みつつ、資産の「流れ」を実感できる貯蓄管理方法を紹介したいと思います。
意識論からさらにもう一歩踏み込んで、より具体的な各種口座の管理/利用方法などを絡めることで、より多くの方の個々のケースに対応できる貯蓄管理方法のなるのではないかと思います。
6ステップで出来る家計術。サイトのURLにちなんで、名付けて「PFI式貯蓄術」。
それでは早速始めてみましょう。
ステップ1: 「生活費」の割り出し
資産管理において、「収支を把握する」というステップは、どうしても避けては通れない基本中の基本の最初のステップとなります。ここでは特に支出に絞って、「ひと月」という単位で、必ず出て行く支出の大まかな金額を割り出してみましょう。
- 多くの場合、最大の支出は家賃/家のローンではないでしょうか。
- 続いて固定費として挙がるのは、光熱費 (電気代/ガス代) や通信費 (ネット/携帯電話) を含むいわゆるUtility fees。
- 各種サブスクリプションサービスを複数利用している場合もあるでしょう。全てを合わせて月々の合計額がいくらになっているのか、しっかりと把握しましょう。
- 車を所有している場合は、車のローンや保険料も固定の支出となることでしょう。また、通勤で利用している場合などは、ひと月分のガソリン代なども固定支出としてある程度算出できるでしょう。
- 食費も、固定額ではないとしてももちろん支出項目のひとつです。もちろん毎週/毎月しっかりと制限額を設定している (=固定額として管理している) のであれば、それに越したことはありません。
- 習い事や交通費など、ひと月の間に必ず発生する支出があるのならば、それらもここでカウントしてしまいましょう。
- さらに外食費等の交際費や、食費以外の生活用品費なども、$50単位程である程度の枠を設定してカウントしてしまいましょう。
- 項目によっては、「ひと月」という単位で管理できないものもあるでしょうが、そこはうまく掛け算や割り算をすることで、大雑把にでも「ひと月」単位での支出を出してみてください。
例: |
家賃 | $1,000 |
ガス/電気 | $50 |
携帯電話/ネット/サブスク | $150 |
車: 保険 | $120 |
車: ガソリン | $60 |
食費 | $650 |
ジム会費 | $60 |
交際費 | $200 |
生活用品 | $60 |
その他諸経費 | $150 |
合計 | $2,500 |
これら全ての合計額 (例: $2,500) を、「ひと月」の「生活費」と呼ぶこととしましょう。 この「生活費」の金額こそが、「ひと月」のサイクルの中で、あなたのChequing口座に最低限入っているべき金額となります。
注意: この「生活費」が、あなたのひと月の収入額より多いのであれば、当然のことながらあなたの月々の家計はマイナスとなり、破綻していることになります。貯蓄云々の前に、支出を抑える努力をする必要があります。
ステップ2: 4つの口座の開設/準備
以下の通りの4つの口座を準備します。
- Chequing口座
- Saving口座
- GIC口座
- Online Saving口座
ステップ3: 初期設定額の入金
そして、「生活費」の額 + 20%程の額 (例: $2,500 + ($2,500 の 20%) = $3,000) を、1~3のそれぞれの口座の残高となるように入金します。
- Chequing口座残高 - 例:$3,000
- Saving口座残高 - 例:$3,000
- 例:$3,000でGIC口座を開設*
これを、各口座の初期設定額及び保持目標額とします。
*3のGIC口座の必要性は賛否の分かれるところです。しかし、銀行に対する信用保持のための口座、ある程度の総合計残高額の保持、または緊急時の資金という意味において有効な口座となる場合がありますので、利率は二の次としても、所有する価値のあるものと考えます。いきなりこの「生活費x3」の資金は用意できない場合もあるでしょう。その場合は、3のGICを省略、または2のSaving口座の額を減らすなどして調整します。その場合は、次のステップに進む前に、この「初期設定額x3」の状態を作ることが当面の目標となります。
ステップ4: 「余剰資金」のOnline Saving口座への入金
ここまでで設定した3つの口座を、
- Chequing口座 = 給与が振り込まれる口座、及び日々の生活費を捻出する口座
- Saving口座 = Chequing口座の残高を保持/補助するための口座
- GIC口座 = 信用保持のため、あるいは緊急時資金のための口座
したがって、それ以外の全ての資金は「余剰資金」として認識されるべき資金だと割り切り、その全てを4のOnline Saving口座へ移動させます。
この際、Online Saving口座は基本的に預け入れに特化した口座だと認識する必要があります。つまり、Online Saving口座からの生活費の捻出は絶対に無し。また緊急時以外で、1~3の口座へ資金を戻すことはないものだとする強い認識が必要です。
ステップ5: 収支サイクルとやりくり
4つの口座の役割を、収支サイクルを絡めて改めてまとめてみましょう。
-
Chequing口座
- 毎月/隔週で給与が振り込まれます。
- 日々のすべての生活費の捻出はこの口座から行います。
- ひと月の単位で、残高が、生活費分 (例: $3,000) と (ほぼ) $0の間で上下します。
- この口座に必要なのはあくまで生活費分 (例: $3,000) です。生活費分を超える額が常駐する必要はありません。超過分は頻繁にSaving口座に移すようにします。
-
Saving口座
- Chequing口座の残高が$0を下回ることの無いよう、必要に応じて、ここからChequing口座に必要な分だけ移す/戻すようにします。
- 生活費以外の一時的な支出が発生し、それがChequing口座でカバーできない場合も、一旦ここからChequing口座に必要な分だけ移し/戻し、捻出するようにします。
- この口座に必要なのはあくまで生活費と同額分 (例: $3,000) です。生活費同額分を超える額が常駐する必要はありません。超過分は頻繁にOnline Saving口座に移すようにします。
-
GIC口座
- 信用保持/緊急時資金のための口座です。一切手を触れない状態にしておくことが理想です。
-
Online Saving口座
- 1~3の合計額=「生活費x3」(例: $9,000) 以外の資金はすべてここに集められます。
- この口座は、預け入れ専用の口座として認識されるべきです。緊急時以外は、ここからの出金はできるだけ避けるようにします。
目標はいたって簡単。給与支給時点で、Chequing口座とSaving口座にそれぞれ生活費額分 (=保持目標額) が存在するようにやりくりすることがあなたのゴールです。そして、それ以外の余剰分はすべてOnline Saving口座に移してしまうというわけです。
ステップ6: 実践とメンテナンス
上記の構成と方法で、数ヶ月ほどやりくりをしてみましょう。まずは、計算上の生活費と実際の生活費との間にどれぐらいの差があるのかが見えてくるはずです。必要に応じて、生活費 (1~3の口座の保持目標額) を見直してみましょう。また、生活費以外の支出がどれくらいの額どれだけの頻度で発生するのかも見えてくるはずです。
ある程度の流れが把握できたら、口座間の資金の移動を自動化してみるのもいいかもしれません。
例えば、
- Saving口座の残高保持のために、毎給与から一定額が直接Saving口座に振り込まれるようにする。
- 毎月の生活費を捻出した時点でも、Chequing口座に$○○程余裕があるとわかった場合は、その額を毎月自動的にSaving口座に移動するようにする。
- Chequing口座の残高保持のためにSaving口座から資金を移す頻度が少なく、毎月$○○程Saving口座に資金が溜まっていくとわかった場合は、その額を毎月自動的にOnline Saving口座に移動するようにする。
- Online Saving口座から資金を戻すことがほとんどないとわかった場合は、そこからのある程度の額をTFSA口座として管理するようにする。
実際には、「ひと月」ごとでは管理できない生活費の項目が突然現れたりして、Saving口座からの不定期な補助を免れない場合なども出てくるでしょう。すべての口座でしっかりと保持目標額 (例: $3,000) を常に保持できているに越したことはありませんが、実際はなかなか難しいものです。しかし、「PFI式貯蓄術」のキモは、あくまで資産の「流れ」を実感するための手段であると理解してください。
この方法により、「生活費」のリミットを (強制的に) 意識し、収支のサイクルの中で、どれぐらいの額を貯蓄に回すことが出来るのか、ということを相対的に理解することができるようになります。
そしてもちろん、生活費をうまく回すことが出来ているのであれば、Online Saving口座にはどんどんと資金が溜まっていくことでしょう。
ぜひお試しあれ。