前項で述べた通り、投資の目的が決まっている場合は、その目的にあった「箱 (制度)」を利用するのがベストの選択となります。
ここで忘れてはいけないのは、投資によって収益を得た場合 (投資商品がただ値上がりしている状態、いわゆる「含み益」の状態ではなく、実際に値が上がった時点で投資商品を売却して利益「=キャピタルゲイン」が発生した場合) は、その収益は収入扱いとなり、タックスファイリング時にはその50%の額が課税対象として扱われ、相応の所得税を払わなくてはいけないという事実です。
だからこそ、非課税で運用できる以下の制度を最大限利用して投資資産を増やすことが、最も有益な方法となります。
RRSP、RESP、FHSA
それぞれの制度の詳細やシステムについては各々の個別の頁 (RRSP、RESP、FHSA) に任せるとして、ここではまずRRSPとRESPとFHSAにおける投資商品の選択と戦略についてまとめてみたいと思います。RRSP、RESP、FHSAは、ともに長期の運用を前提とした投資環境です。RRSPなら40年間以上、RESPなら18年間、FHSAなら5年から15年程を目安として拠出 (投資商品の購入) をし続け、RRSPならリタイアメント時 (65歳時あるいはそれよりも早い時点)、RESPなら子供が18歳になる時点、FHSAなら住居の頭金が貯まった時点をゴールとして、運用を管理する必要があります。通常は、いわゆるRRSP/RESP/FHSA Providerとなる銀行をはじめとする金融機関を通して管理をするわけですから、投資先はそれぞれの金融機関が提供する投資商品ということになり、ほとんどの場合は投資信託 (Mutual Fund) が最も一般的な選択肢となります。
ポートフォリオ
投資における「ポートフォリオ」とは、保有している投資商品や投資資産の「組み合わせ」のことを指します。自身の環境やゴールを鑑み、リスク分散を考慮しながらも目標を達成できるような「効率的な組み合わせ」を模索しながらポートフォリオを構築します。 長期ターゲットの運用では、ゴールに近づくにつれてより保守的なリスクの低い投資商品にシフトしていく」
というのが一般的な戦略になります。10年以上のスパンでの運用では、例えば早い時期にリスクの高い投資で失敗をしたとしても、まだ十分に取り返すだけの収入/拠出と時間がある、という考え方です。この考えを踏襲した上で、下記にあげるようなMutual Fundのカテゴリの中から自分にあったファンドを選び、また必要に応じてバランスを調整しながら運用をしていくことになります。
マネーマーケット (Money Market) ファンドRRSP、RESP、FHSAの元来の目的である、「未来のある時点へ向けての貯蓄/資産運用」という点を鑑みると、一般的には、ターゲットイヤーファンドを中心にポートフォリオを構築するのが最も安全かつ無難であると考えられます。ただし、全ての資金をターゲットイヤーファンドのみに投入するのは賢明とは言えません。ここでも、さらにもう一段階「リスク分散/分散投資」の基本を踏襲することが大切です。
財務証券や預金証書、通貨立てなどで構成されていて、想定される利回りも極端に低い代わりに、元本割れリスクも極端に低い。ファンドのカテゴリーにおいては、最も安全性の高い類のファンド。
フィックスドインカム (Fixed Income) ファンド
固定金利ベースの国債などをベースに構成されていて、一定の利率で上がり続けることが想定されるファンド。元本割れリスクも低く、こちらもファンドのカテゴリーにおいては、安全性の高い類のファンド。
バランスド (Balanced) ファンド
国債、通貨立て、国内株式、海外株式等々、複数の対象で構成されていて、それぞれの割合が常に一定に保たれるように更新されながら運営されるファンド。リスクは高くなりつつも、一つの要素の影響を最小限に抑えるためにリスク分散がされている。安全性は「中」程度のファンド。
ターゲットイヤー (Target Year) ファンド
バランスド (Balanced) ファンドをベースにしながら、ターゲットとなる未来のある時点 (年) に近づくにつれて、よりリスクの低い対象を増やしながら構成していくファンド。
例えば「Target 2030 Fund」と銘打たれたファンドでは、2010年代には株式が中心のリスクの高めの構成で運用され、2020年代にはその割合がよりリスクの低い国債などに移行され、ターゲットの2030年の時点においては99%通貨建ての構成になる。主にRRSPやRESP用のファンドとして推奨されていて、「Target Retirement 2030 Fund」や「Target Education 2030 Fund」等、わかりやすく名付けられている。安全性は、「中」程度で始まり、ターゲット年に向けて段階的に低くなる。
アメリカ / カナダ (US / Canada) ファンド
大局的にはほぼ連動して動くとは言え、アメリカとカナダはあくまで別の市場。そのニーズに対応して、カナダ市場の株価などに特化して構成されたファンド、アメリカ市場の株価に特化して構成されたファンドが、別々のカテゴリーのファンドとして提供されているのが通常。
インターナショナル (International) ファンド
欧州市場の要素で構成されるファンド、アジア市場の要素で構成されるファンド、日本市場の要素で構成されるファンド等々、市場地域をベースに構成されるのがこの類のファンド。単純に、カナダ/アメリカから見て外部市場であるという理由において、最もリスクが高く安全性の低い類のファンドとして認識される。
例えば...
- フィックスドインカムファンドとターゲットイヤーファンドにそれぞれ30%投入しつつ、リスクを覚悟でカナダとアメリカの株式中心のファンドにそれぞれ20%づつ投入する
- 中国市場、またはその他の途上国に関わる要素を鑑みて、アジア市場の成長が期待できるので、向こう5年間はアジア株中心のファンドをより多く組み込んでみる
すでに個々で分散投資がされているそれぞれのファンドを、さらに「複数」バランスよく選択することで、更なる分散投資が可能となるわけです。