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カナダでの投資: 実践編 II

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

実践編 II では、長期投資のシナリオに特化せず、またリタイアメント資金や教育資金以外を目的とした投資のケースを考察してみましょう。

TFSA (Tax-Free Savings Account)

リタイアメント資金 (RRSP)、教育資金 (RESP)、住居購入資金 (FHSA) への投資では、それぞれの制度を利用することで非課税の運用が可能でしたが、それら以外の目的の資金を投資によって運用したい場合には、TFSA (Tax-Free Savings Account) の制度を利用することで、こちらも非課税での運用が可能です。
*TFSAの制度や仕組みそのものについては次項にて詳しく説明していますので、そちらを参照してください。
TFSAには拠出限度額があるので、運用に回せる資金額はそれによって制限されます。ただし、2009年から始まったこのTFSAの制度、拠出制限額の累計は (2023年現在で) すでに$88,000。その全てを投資環境として使い切ってしまっている人はまだまだ少ないのではないでしょうか。TFSAの拠出額枠がまだ残っているのに、わざわざキャピタルゲインへの課税が発生するTFSA外の環境で投資を行う理由は一切ありません。まずはTFSA枠をしっかりと有効に利用することを心掛けましょう。

TFSAを利用した投資では、銀行や証券会社を通じてそのアカウントを開設し、それぞれが提供している投資商品を通じて投資を行うことになります。銀行であればGICや投資信託が中心に、証券会社であれば投資信託と株式が中心となります。

ポートフォリオ
単純に余剰資金の積み立て先として投資商品を選び運用するような場合では、RRSP/RESP/FHSAと同様に、長中期ゴールの投資と見立てて戦略を立てることができます。長中期投資の基本はともかく、「ゴールまでの期間がまだ長ければ長いほどリスクは高めに、ゴールに近づくほどリスクは低く」。これを踏襲しながら投資商品の選択を行う必要があります。
あるいは、数年単位のある程度近い将来をゴールとして具体的な達成目標金額を設定している場合などは、それぞれのゴールに見合った戦略を立てることが必要となるでしょう。その場合は、セオリーをあえて無視しつつ、リスクを覚悟しながらも高いリターンを望む戦略 (ハイリスク、ハイリターン) をとることもあるでしょう。

どちらの戦略をどの程度の割合で踏襲するかに関わらず、ここでも最も基本として考えられるべきことは「Diversify = リスク分散/分散投資」、これ以外にはありません。自分の年齢、ゴールまでの期間、リスクを負わずに運用されるべき投資額、リスクを負って運用しても許される投資額、各投資商品に関する自分の知識等々、さまざまな要素を鑑み、自分の環境に合ったポートフォリオを構築するよう心掛けましょう。

ドル・コスト平均法 (dollar-cost averaging)

実践編の最後に、長中期投資の戦略として一般的な、「ドル・コスト平均法」という投資手法を紹介してみましょう。
「安い時に買い、高い時に売る」というのは投資利益を得るための基本ではありますが、こと長期投資においては、「売る」という行為はあまり意識することはありません。それよりも、投資資産を増やすために投資商品を、いつ、いくら、どのように「買う」かということが大事になってきます。
例えば、投資商品の新規購入は「一年に一回だけ、その時手元にある余剰資金で一括で..」という方法をとったとしましょう。投資商品である以上、その価格は常に変動しているわけですから、その一年に一回の購入の機会の瞬間が、たまたま年間最高値の状態であることもありえるわけです。あるいは、一年に一回の購入の機会に年間最安値の状態であったのに、たまたまこの年に限っては余剰資金が少なかった..、ということもあるかもしれません。
そのような不確定要素による損得の影響をできる限り少なくするためにとる戦略が、「定額購入法」とも呼ばれるこの「ドル・コスト平均法」という手法です。
方法はいたって簡単、
同一額で短い周期で定期的に継続して購入する
これだけのことです。
つまり、「一年に一回、不定期額」での資金投入ではなく、「月に一回、定額」での資金投入をするということ。
金額を定額にすることにより、自動的に「投資商品の値段が高い時には少ない数量を、値段が安い時には多くの数量を購入」することができ、平均値の点で結果的に長期的には有利になるという考え方です。
相場の動きにより、その優位性の度合いには賛否はあるものの、長期投資における基本的な戦略の一つとして知られる手法です。ほぼ積み立て預金のような意識で家計の予算に組み込みながら、投資資金を確実に増やすことができるという意味で、とても有効な手法あることには間違いありません。