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カナダでの仕事: 給料明細

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

毎月 (あるいは月に2回) 楽しみな給料日。自分の給与からいったい何がいくら引かれて、どういった仕組みで手取り額が決まっているのか。パーソナルファイナンスに関する項目の中でも最も大事であろう「収入」に関しては、より明確に理解しておく必要があります。
本項では、(いわゆるフルタイムワーカーとして就業していることを想定した上での)「給料明細」、いわゆる「ペイチェック/ペイスタッブ」の中身について、理解を深めてみましょう。(パートタイムの場合はこちら >> 給料明細 (パートタイム))
注意:
しっかりとした雇用主のもとで雇用契約を結んでいる限り、毎給与日にはしっかりと「給料明細/ペイスタッブ」という形で支給給与の明細が通達されます。
給料明細には、支給給与額のみならず、税金をはじめとする全ての天引き項目やその額が詳細に明記されているべきで、それらは最終的に当該年終了後に発行される「T4」フォーム上の数字としてまとめられます。

特にワーホリ環境などで杜撰な雇用主に関わってしまった場合など、それらの詳細が全く提供されない環境に出くわしてしまうこともあるでしょう。
そういった環境では、自らの給与額が杜撰に管理されている可能性があるばかりでなく、雇用主が、税金や保険額支払い逃れをしている場合や、同意の無いままにいわゆる「under the table」形式の違法な雇用形態となってしまっている場合もあります

自らの雇用環境において、しっかりと所得税が納められていること、義務である保険料等がしっかりと納められていることなどを確認することは、とても大切なことです。

Earnings / 支給+勤怠

基本給 (Regular) に始まり、時間外手当 (Overtime) など、天引き前のすべての支給額分はこの項目にまとめられて提示されます。
時給換算の雇用形態の場合などは、時給額 (Rate) と就労時間 (Hours) が明確に示されます。日本でよく見られる役職手当や交通費支給などは、カナダではあまり一般的ではありませんが、インセンティブやボーナスなど (課税対象となる) 全ての支給項目は、ここにまとめられて提示されます。各項目ごとに、当該のペイピリオド毎の支給額と、その時点までの年間支給合計額 (YTD: Year to date) が示されているのが一般的です。

Deductions / 控除

所得税、CPPとEIの徴収額、保険料など、支給額分から引かれる全ての項目は、この項目にまとめられて提示されます。

  • 所得税/Income Tax
    雇用契約時に提出された「TD1」フォームの情報を元に計算された「みなし税額」が引かれます。通常は、このみなし額が、タックスファイリング時に最終的に割り出される実際の確定税額より多くなるために、多く払った分が「タックスリターン」として返還されるというわけです。

    CPP (Canada Pension Plan)
    支給額と、年毎に設定される「Basic exemption amount (2024年なら$3,500)」と「Employee and employer contribution rate (2024年なら5.95%)」とを元に計算される一定額が、支給回ごとに引かれます。そしてその合計が、これまた年毎に設定される「Maximum annual employee and employer contribution (2024年なら$3,867.50)」に達した時点で、徴収は終了します。
    この仕組みにより、年上半期の手取り額に比べて、下半期の手取り額が大きく増えることがあります。支給額が多ければ多いほど支給回毎の徴収額も増える訳ですから、年途中の時点で徴収額合計が「Maximum annual employee and employer contribution」に達することがありえる訳です。その場合は、それ以降のCPPの徴収は無くなります。
    例えば、月2回の給与支給でCPPが毎回$250徴収されているとして、例えば2024年なら$3,867.50に設定されている「Maximum annual employee and employer contribution」は、8月の2回目の給料日を迎えた時点で全て払い終わることになります。したがって、それ以降は毎支給額からCPPは一切徴収されない (= 手取りが$250多くなる) ということが起こるわけです。
    2024年からは、いわゆる「CPP2」と呼ばれる二段階追加徴収の制度が始まりました。2024年においては、$68,500までの所得に対しては5.95%の徴収。加えて、$68,501から$73,200の所得に対して4.0%の徴収 (最大額=$188) が適用されます。したがって、所得が$73,200以上の場合は、徴収額合計は $3,867.50 + $188 で $4055.50 となります。

    EI (Employment Insurance)
    支給額に対し、年毎に設定される「EI premium rates (2024年なら1.66%)」をかけた額が、支給回ごとに引かれます。そしてその合計が、これまた年毎に設定される「Maximum annual employee premium (2024年なら$1,049.12)」に達した時点で、徴収は終了します。
    CPPと全く同様に、この仕組みにより、年上半期の手取り額に比べて、下半期の手取り額がさらに増えることがあります。年途中の時点で徴収額合計が「Maximum annual employee premium」まで達すれば、それ以降は毎支給額よりEIは一切徴収されない (= 手取りが多くなる) ということが起こります。

    その他
    • 州政府が提供している公的メディカルサービスの保険料も、Deductionのひとつとしてここでリストされます。その額は、各州のプログラムのルール、給与額、家族構成等によって全く異なります。
    • 雇用主が提供しているいわゆるグループ保険の保険料も、Deductionのひとつとしてここでリストされます。
    • 雇用主が提供するRRSPプログラムを利用している場合は、そこへの拠出額も、Deductionのひとつとしてここでリストされます。

Net Pay / 差引支給額

EarningsからDeductionsを引いた金額が、いわゆる差引支給額 (=手取り額) となって支給されます。

給料明細に示されている数字の仕組みをしっかり理解すること、ひいては、パーソナルファイナンスにおける「収入」分の詳細を隅々まで理解することは、資産管理において最も大切なことのひとつです。各項目に対して示される年間合計額 (YTD: Year to date) を常に正しく理解しておくことは、タックスファイリング時への準備へと繋がることでしょう。
あるいは、何らかの理由で間違った数字が示された場合など、そもそもその仕組みを理解していなければ、指摘をすることさえできません。この点は、特にワーホリ環境などにおいては、雇用主との信頼関係の構築という意味においても、とても大切なことです。
自らの生活の基盤となる「収入」の詳細です。しっかりと理解するよう勤めましょう。