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カナダでのリタイアメント: Registered Retirement Savings Plan (RRSP)

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

Registered Retirement Savings Plan (RRSP)

RRSPとは、老後/引退後の為の資金を形成することを支援する、各種税制優遇措置付き登録制資金形成制度です。「就労所得がある」こと、そして「(最初の拠出をしようとしている時点から見て) 前年分のタックスファイリングを済ませている」ことが、RRSPを開設する、または拠出を行う為の条件となります。
各種金融機関、または多くの場合、雇用先が提携する金融機関を通してそのアカウント/口座を開設し、年毎の拠出制限額を鑑みながら、継続的に拠出を行うことでその資金を形成していくことになります。

RRSPのメリット/デメリット、あるいはそもそも「RRSPをはじめるべきか否か」という点について、まとめてみましょう。

RRSPのメリット

RRSPに関しては、3点、大きな税制上の優位点を理解する必要があります。
1. タックスファイリング時の控除
比較的短期的な視点でおそらく最も影響のある利点となるのは、「RRSPへの拠出額は、タックスファイリングの際にそのまま控除として使える」という事実でしょう。「税金」の項目でも触れたとおり、ここで言う控除 (deduction) とは、総所得額から直接引き算のできる項目であり、多くの場合、おそらく最終的なタックスリターン額に最も影響を与える項目のひとつとなります。
もちろんRRSPの拠出限度額 (後述) は個々によって違いますので一概には言えませんが、例えば$10,000~$20,000辺りの限度額に対して、満額の拠出をするのと、一切の拠出をしないのとでは、タックスリターン額に数千ドルの差が出ることは想像に難くありません。

2. 運用益が非課税
RRSPへ拠出された資金は、RESPやTFSAなどと同様、各種金融機関が提供する投資商品 (元本保証のSaving AccountやGIC、あるいは投資信託や株式など) を通じて運用することとなります。この運用で得られる利子所得や運用益などは、すべて非課税となります。

3. 所得税の先延ばし
RRSPへ拠出された分の額は、その年の所得額への控除に使えるわけですから、事実上その分にかかる所得税を免れることになります。老後/引退後にRRSPから資金を引き出す時には、それらは所得とみなされその時点で所得税が適用されます。多くの場合老後/引退後は所得が低くなり、低い所得税率区分が適用されることが予想されるため、結果としてその差分だけ得をする、という考え方です。

RRSPのデメリット

RRSPは、「リタイアメントの時点まで、一切引き出す予定がない」ことを前提に、その資金を形成することを支援する制度です。その本来の制度/目的通りに理解し利用している限り、基本的に大きなデメリットはありません。目的を逸脱し、リタイアメント以前に引き出しを行ったりした場合、または、リタイア後でも、持続的な収入ソースとして利用せずに一括での引き出し (cash-out) を行ったりした場合などには、その引き出し額に対して、withholding tax (源泉徴収税) として、10%から30%が無条件で徴収されます (=事実上のペナルティー)。
リタイアメント前にペナルティーなしでRRSPから引き出しができる例外として、初めて住宅を購入する際の資金 = Home Buyers' Plan (HBP) と、自身あるいは配偶者の就学のための資金 = Lifelong Learning Plan (LLP) とが、制度として認められています。

RRSPをはじめるべきか否か

それでは、例えば現時点で20代、30代、40代..でカナダに在住しているとして、今後数十年間あるいは老後/引退後、そのままカナダに在住し続けるかが確かではないといった場合、RRSPを始めるべきなのでしょうか。
リタイアメント資金形成をはじめるべきか否か >> 常にYES!
現在の年齢、あるいは将来の環境にかかわらず、リタイアメント後の資金を準備することの必要性に関しては、答えは常にYesです。また、リタイアメントプランそのものに対する考え方として、前述の「労働収入があるうちに、その一部をリタイアメント後の資金として捻出しておく」という方法論は、これもまた将来の環境にかかわらず、答えは常にYesです。したがって、まず現時点でリタイアメント後の資金形成の準備を始めていないのであれば、それは今すぐに始められるべきものとなります。
RRSPによってリタイアメント資金形成をするべきか否か >> ほぼYES!
では、それをRRSPを介して行うメリットはなにか。それは、上記の3つの税制優遇措置に他なりません。所得税の控除に関しては、カナダでタックスファイリングをし続けている限り、1年単位でその大きな恩恵を受け続けることが出来ます。他2点に関しては、その恩恵を受けるに際し、リタイアメント時にどこに居住しているかというのはほぼ無関係です。したがって、例えば数年内にカナダを離れることが確定していて、長期的な観点から (上記「デメリット」を鑑みて) その恩恵が最小限であると判断されるような場合以外であれば、リタイアメント資金形成には、RRSPがもっとも有効な方法であると言う事が出来ます。