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カナダでの投資: 基礎知識

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

投資に関する基礎知識として、まずは投資商品の種類、とくに比較的簡単に手の届く類のものをまとめてみましょう。
  • 株式
    投資商品と聞いてまずはじめに思い浮かぶのは、おそらく株、いわゆる株式ではないでしょうか。英語では「share」あるいは「stock」、また文脈によっては「equity」とも呼ばれます。
    「share」という言葉からもわかるとおり、ある株式会社/企業の株式を購入するということは、その会社の一部を所有することを意味します。一般的に、会社の業績が良ければ (または、良くなることが見込まれれば) 株価は上がり、業績が悪ければ (または、悪くなることが見込まれれば) 株価は下がります。ある時点で株式を購入し、株価が値上がりした時点で売却すれば利益に、値下がりした時点で売却すれば損益となります。
    通常は証券会社、あるいは銀行の投資専門サービス担当が窓口 (brokerage) となり、購入/売却などの手続きを行うことができます。カナダ6大銀行はそれぞれ投資専門窓口を持っていますし、専門会社としてはQuestradeQtradeなどがメジャーです。

    個人で株式投資を行う場合は、当然どの会社の株をいつどれだけ買うか、いつどれだけ売るかというのは個人の裁量でコントロールします。日中マーケットがオープンしている間は常に変動する株価に対して、株価が下がった時点で売ってしまえば当然損益となり、投資した元金が減ることも大いにありえます。株式投資で利益を上げるためには、株式を購入する会社/企業の四半期毎の業績報告や業界の動向に関するニュース記事をこまめにチェックするなど、ある程度以上のコミットメントが必要となります。

    投資信託
    英語では「Mutual Fund (ミューチュアルファンド)」と呼ばれるのが投資信託です。
    個人で株式投資を行う場合は、例えば一人で20社や30社もの株式を購入し管理するのは大変な手間です。Mutual Fundでは、Brokerage内のファンドマネージャーと呼ばれる担当者が、自ら選定した株式をはじめとする複数の投資対象をまとめ、パッケージ (ファンド) として管理/運営します。パッケージに含まれる投資対象の値が上がればそのファンドの値段は上がり、下がればファンドの値段は下がります。
    株式等と同様に、証券会社あるいは銀行が窓口となってファンドを購入/売却することができ、当然購入した時点より値上がりした時点で売却すれば収益に、値下がりした時点で売却すれば損益となります。株式と違い、Mutual Fundは通常その日のマーケットが終了した時点でファンドの価格が決まります。

    ETF (上場投資信託)
    大雑把に「株式と投資信託の間に位置するのもの」と位置づけされるのが、「Exchange Traded Fund (上場投資信託) = ETF (イー・ティー・エフ)」と呼ばれる投資商品です。
    ETF は、通常の投資信託と同様に複数の投資商品がまとめられたパッケージ (ファンド) ですが、通常の投資信託と違い、マーケットがオープンしている間にその値が変動しマーケットがオープンしている間に売買取引が行えます。
    株式や投資信託と同様に、証券会社あるいは銀行が窓口となってファンドを購入/売却することができ、当然購入した時点より値上がりした時点で売却すれば収益に、値下がりした時点で売却すれば損益となります。

    GIC
    GIC (定期預金) を投資商品と位置づけることに賛否はあるかもしれませんが、前述の通り、「Guaranteed Investment Certificates」の略であるGICは、少なくともカナダのパーソナルファイナンス事情においては、投資商品のひとつとして扱われています。最近では、いわゆる単純な利率固定型ではなく、マーケット指標に連動して毎年利率が変動する (ただしマイナスにはならない) 形のGICなども登場し、より投資商品としての側面が押し出されています。
    投資商品として見た場合、株式や投資信託との最も大きな違いは「元本保証」であるという点です。GICの場合は、投資した資金 (元本) が、その最初の値より下がることは絶対にありません。したがって、大きなリターンを望むことができない代わりに、確実に資金を増やすことができる投資先として利用することができます。

Diversify (=分散投資) の重要性

投資に回せるある程度の資金があったとして、例えばその全額をひとつの会社の株式購入に当てたとしたらどうでしょう。ひとたびその会社の業績が悪くなれば、あなたの投資資産は限りなくゼロ近くになることさえありえるわけで、非常にリスクの高い状態にあります。
では二つの会社ではどうでしょう。例えば半分をApple社の株式、もう半分をAmazon社の株式の購入に当てたとします。いいえ、これでも十分なリスク回避とはなりません。ITバブル崩壊のような事態となれば、同業界の両社の株価は同様に下がってしまい、あなたの投資資産は確実に減ってしまいます。
では別業界の企業の株式を組み込むのはどうでしょう。製薬業界大手のPfizer社の株式と、飲料水大手のCoca-Cola社の株式も併せて保有してみました。いいえ、これでもまだ不十分です。アメリカ全土を巻き込むリーマンショックのような不況となった場合には、総じて株価が下がってしまうことでしょう。
では例えばその時、比較的影響の少ない、あるいはアメリカの市場とは直接連動しない中国の会社の株式を保有していたとしたらどうでしょう。または、そもそも投資資金の半分はGICで運用していたとしたらどうでしょう。あなたの投資資産は、複数の要因に依存していることになり、単体の要因による大幅な乱高下を避けることができるのです。
これがリスク分散/分散投資、つまり「Diversify」という考え方です。

そして、この分散投資をある程度のレベルまで自動的に行えるのが、Mutual Fundによる投資ということになります。
上記の通り、Mutual Fundはファンドマネージャーが管理するパーケージ (ファンド) として用意されます。ひとつのファンドの中には、複数の会社の株式、国債、現金、あるいは別の会社の運営するファンド等々、様々な投資対象が含まれ、そのファンド内ですでに分散投資が行われています。ファンドにも種類があり、例えばカナダのマーケット指標に連動するようにデザインされたファンド、アメリカの中小企業の株式を中心としたファンド、ヨーロッパの景気の影響を受けるようにデザインされたファンド...などなど、ひとつのBrokerage内で数十を超えるファンドが用意されていて、これらをさらに複数種類購入することで、さらにもう一段階分散投資ができるということになるわけです。

「投資」と「投機」の違い

投資の種類の考察において、もうひとつの重要なポイントに「『投資』と『投機』の違い」というものがあります。
投資の中でも、短期投資でギャンブル性の高いものが「投機」、といったような説明がされることもしばしばありますが正確ではありません。正確にはその名の示すとおり「『資本』に投資するのが『投資』」、「『機会』に投資するのが『投機』」と理解されるべきです。長期的な企業の展望を見越し、その資本の成長を期待して資金を投じるのが「投資」。相場の変動のみを軸に差益を得ようとして資金を投じるのが「投機」(結果的に「短期投資でギャンブル性の高いもの」となる)。
長期的な資産形成と家計のやりくりを目的とするパーソナルファイナンスにおいては、「投機」は避けるべきアプローチとして理解されるべきです。