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カナダでの投資: TFSA: ケーススタディ3

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

ケーススタディ3 - アグレッシブな投資家、Cさんの場合

注意: 以下の例は、非常に投資リスクが高く、一般的には一切お勧め出来ない極端なシナリオです。あくまでTFSAの仕組みを理解するための例としてのみ参考にしてください。

株式や投資信託で、普段からある程度の資金を投資に注ぎ込んでいるCさん。とは言え、普段は決して極端なリスクを冒さないポートフォリオで運用をしています。TFSAを考える上で、運用利益が非課税となるという点は当然魅力的ですが、Cさんは「拠出額に限度がある」というルールを、さらに一歩踏み込んで考えてみることにしました。

「拠出限度額がある」=「投資支出額限度がある」=「最大リスクに限度がある」

つまり、「最大でも投資に注ぎ込めるのは年間$5,000-$5,500のみということは、最悪のシナリオに陥ったとしても、最大のロスでも年間$5,000-$5,500のみである」と考えたのです。その結果Cさんは、TFSAを「強制的に自制が効く『投機』環境」として捉えることにしました。

  • TFSAは、銀行のみがそのアカウント開設サービスを提供しているわけではありません。Cさんは、普段から株式の購入などで慣れ親しんだ証券会社が提供しているTFSAのサービスを利用することにしました。ここでは、株式や投資信託のみでなくETFや国債など、投資先の選択肢が豊富で、またその購入手続きも慣れ親しんだものです。
    注意: この場合、TFSAの「拠出」としてこのアカウントに一旦資金を入金し、その資金を利用して投資商品の購入/売却といった取引きを行うという形になります。つまり、TFSAの「箱」に既に入っている資金を使って行う投資商品の購入/売却の取引きそのものは、限度額計算には一切影響を与えません。

  • 毎年年初めに、限度額目一杯を拠出するようにしています。

  • TFSAを「投機」環境と割り切っているCさんの戦略は明快です。2009年から2012年にかけて、ある特定の中小企業a社一銘柄の株のみ、しかも俗に「ペニーストック」と呼ばれる、一株$1前後の値で推移している株を、ひたすら一括購入し続けました。
    *「ペニーストック」の利点であり最大のリスクは、その値上がり/下がり率の幅です。$0.50から$1.00に上がっただけでも100%の値上がり率となり、大きな利益が見込まれますが、当然ながら同時に極端な値下がり率または最悪企業倒産のリスクもあります。企業の業績や、比較的少ない株式の発行数など様々な要素から、株価は乱高下する傾向が高く、一般的には避けるべき高リスクの投資対象となるものです。

  • $0.40から$1.00の間で推移していたa社の株価も、2012年中旬には上げ止まった感があり、2012年秋にかけて、Cさんはその全てを売却しました。運よく値上がりを掴まえた形となったCさんのTFSA資産は、元金$20,000 ($5,000 x 4年) に対し、運用益実に2.25倍、総額$45,000と育っていました。
    注意: 前述の通り、この「売却」手続きは、あくまで売却益をアカウント内に戻したと扱われるだけであって、TFSAの「引き出し」とは扱われません。TFSAのアカウント内の資金を、TFSAでないアカウントに移動させた場合にのみ「引き出し」として扱われます。

  • 引き続きリスクを厭わないCさんは、$45,000全額とその後の拠出額とを、なんとまたしても別のペニーストック銘柄b社の株の購入に充てました。

  • 購入時$0.60だったb社の株価は、2014年時点でなんと$5.00近くにまで値上がりし、この時点でのCさんのTFSAの残高は、およそ$350,000にまで膨れ上がっています。

  • TFSAですから、2012年の売却時の$25,000分の運用益は当然非課税。2014年時点で売却したとして得られるおよそ$300,000超にもなる運用益も、丸ごと非課税となります。

2009年1月からのCさんの拠出額推移は以下の表の通り。
拠出分は「毎年限度額まで...」というだけのいたって単純なもの。全ての運用はTFSA内での株式購入/売却なので、限度額計算には一切影響を与えません。
(2014年年始時点まで)
 200920102011201220132014
設定拠出限度額$5,000$5,000$5,000$5,000$5,500$5,500
前年未使用分の繰越し額
(前年の⑤)
-$0$0$0$0$0
合計拠出限度額
(①+②)
$5,000$5,000$5,000$5,000$5,500$5,500
拠出額$5,000$5,000$5,000$5,000$5,500
未使用拠出額
(③-④)
$0$0$0$0$0
考察
きわめて高リスクであり、また非現実的に極端な運用成功例として示した上記のシナリオですが、実はこれ、2013年にとある経済誌で取り上げられた、実在のTFSA成功例のひとつ ("The Great TFSA Race: Penny-stock investor")。おそらくその時点で、TFSA史上最も成功した運用例と言えるのではないでしょうか。
繰り返しますが、このような高リスクの運用戦略は、パーソナルファイナンスの観点からすると、決してお勧めできるものではありません。ただし、いろいろなファクターを鑑みた結果、TFSAを「投機」環境として利用することに決めるに至ったそのロジックは、合理的である場合もあるでしょう。
ちなみにその記事で取りあげられた、Cさんのモデルである実際の男性の場合は、
  • 自身のRRSPへは常に十分に拠出していて、あくまで余剰資金をTFSAに充てている
  • 奥さんも積極的にTFSAを利用していて、そちらではリスクの低い確実な運用をしている
  • ペニーストックとは言え、ある程度のリサーチを元にしっかりと銘柄を選択している
  • 最大リスクは全損であると理解している
といった諸条件を全て鑑みた結果、TFSAを「投機」環境として利用しても良いという結論に至っています。