BAR


カナダでの投資: TFSA: ペナルティ

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

TFSAのルールをしっかりと理解していたつもりでも、思わぬ勘違いから過剰拠出をしてしまい、突然ペナルティ勧告の手紙を受け取ってしまうこともあるでしょう。 ここでは、ペナルティの仕組み及びその原因を理解するための情報、対処法等をまとめてみましょう。

TFSAのペナルティの定義/計算方法は以下の通りです:
ある時点で限度額を超える拠出があったとして、ひと月を一単位として、その月内での最大超過拠出分の1%の額が、その月へのペナルティとなる
例がないと少しわかりにくい説明ですが、ここでまずしっかり理解しておくべきなのは、ペナルティの金額が、超過拠出額とその保持期間をもとに計算されるという点です。
限度額を超えて拠出された金額が多ければ多いほど、またそれを即時に引き出さずにTFSA内に保持した期間が長ければ長いほど、ペナルティの額は多くなります。
つまり、正しい拠出限度額があり本来はその制限の中で運用しなければいけないにもかかわらず、「不正に限度額を超えて拠出し、運用できる機会を不正に作り出し、またその状態を保持し続け、本来得られるべきではない運用益を不当に得た」であろうことに対するペナルティが発生する、という考え方です。もちろん実際にそのような意図があったか否かにかかわらず、ペナルティは発生します。

少し長くなりますが、CRAのサイト内で実際のペナルティ例として挙げられているケースをもとに、ペナルティの発生パターンや計算法を見てみましょう。
== 例1 ==
ロザンナさんは31歳のカナダ在住の女性。
  • 2009年の2月6日にTFSA口座を開設し、それ以来2009年から2019年まで、それぞれ各年の設定限度額いっぱいまでTFSAに拠出
  • 2020年2月、$4,500を拠出
  • 同年10月、予想外のボーナス収入$4,100を得た彼女は、限度額のことはすっかり忘れて、その$4,100をそのまま10月30日付けでTFSAに拠出してしまいました
  • そしてそのまま気づかずに2020年が終了...
ペナルティ
2020年まで引き出しや繰り越し等も一切なかったテレサさんの2020年の限度額は、設定限度額ままの$6,000。しかし、2020年の10月30日の時点で、拠出合計額が $8,600 ($4,500 + $4,100) となってしまい、その時点から$2,600 ($8,600 - $6,000) の拠出超過となってしまいました。したがって、$2,600 x 1% = $26 で、ひと月につき$26のペナルティ。すぐに気づいて引き出せばよかったのですが、彼女の場合はそのまま気づかずに2020年が終了。つまり、10月も含め11月、12月と拠出超過状態が続いたことにより、$26 x 3ヶ月 = $78 が、2020年分のペナルティとなって請求されることになってしまいました (もしすぐに気づいて10月31日の時点で$2,600を引き出せば、10月分だけの$26だけで済んでいました)。
上記の例は、単純に年間の拠出合計を忘れていたがために起こったパターン。年間の拠出額合計をしっかり自己記録していれば、容易に避けられていたケースです。

例2では、さらに引き出し (withdrawal) が加わったケースを見てみましょう。
== 例2 ==
ジャマールさんはカナダ在住の43歳の男性。
  • 2009年にTFSA口座を開設し、それ以来2009年から2018年まで、それぞれ各年の設定限度額いっぱいまでTFSAに拠出していて、2018年終了の時点での合計拠出額は$57,500
  • 2019年は以下の手続きを実行
    • 1月6日に$5,000の拠出
    • 3月10日に$1,000の拠出
    • 6月3日に$2,700の拠出
    • 10月2日に$800の引き出し
ペナルティ
ジャマールさんの2019年の限度額は、設定限度額ままの$6,000。3月の拠出までは問題はなかったものの、6月の$2,700の拠出によって、拠出合計が $8,700 ($5,000 + $1,000 + $2,700) となり、$2,700 ($8,700 - $6,000) の拠出超過が発生。6月の時点から、ひと月につき $2,700 x 1% = $27 のペナルティが発生します。ただし、10月に行った引き出しにより、超過拠出分が$1,900 ($2,700 - $800) に減り、ひと月毎のペナルティも$19 ($1,900 x 1%) になります。 したがって、2019年のペナルティは、
  • 1月から5月までは$0
  • 6月から10月までが$27 x 5ヶ月 = $135
  • 11月から12月までが$19 x 2ヶ月 = $38
で、合計$173となります。
(10月中に引き出しを行ったとしても、ペナルティはその月内に起きた最高拠出超過額を元に計算されるので、10月分のペナルティはあくまで$27のまま)

ちなみに、この状態から、ジャマールさん2020年の拠出限度額はどうなるのでしょうか。
  • 2019年の設定拠出限度額は$6,000
  • 2019年は$8,700の拠出がなされたので、2020年への繰り越し額は -(マイナス) $2,700 ($6,000 - $8,700)
  • 2019年に$800の引き出しがあったので、この分の繰り越しが$800
  • 2020年分の設定拠出限度額は$6,000
したがって、-$2,700 + $800 + $6,000 = $4,100 が、ジャマールさん2020年の拠出限度額となります。
例1と例2では、年が明けるとともに新たな年の設定限度額が加わることで超過分が相殺され、新年1月以降のペナルティは発生しなくなります。ただし、以下の例3のように、複数年にわたってペナルティが発生し続けるパターンもあります。
== 例3 ==
フランシンさんは39歳のカナダ在住の女性。
  • 2009年にTFSA口座を開設し、それ以来2009年から2017年まで、それぞれ各年の設定限度額いっぱいまでTFSAに拠出
  • 2018年1月、(その年の設定限度額である)$5,500を拠出。同年6月18日、予想外のボーナス収入$7,500を得た彼女は、年間毎の限度額のことはすっかり忘れて、その全額をそのまま6月25日付けでTFSAに拠出してしまいました
  • 「年間毎の限度額」というコンセプトを勘違いしたままのフランシンさん、多額の一括拠出の達成感からか、その後2018年と2019年丸まるTFSAのことはしばらく忘れていました...
ペナルティ
  • 2018年
  • 1月に$5,500を拠出した後、6月に$7,500を拠出した時点で、2018年の設定拠出限度額$5,500を差し引いた$7,500 ($5,500 + 7,500 - $5,500) が超過拠出となり、毎月$75 ($7,500 x 1%)、6月から12月までの7ヶ月間で合計$525のペナルティとなります。
  • 2019年
  • 2019年への繰り越し額が -(マイナス) $7,500。これは2019年1月時点で加わる2019年分の設定拠出限度額$6,000でも相殺しきれないため、2019年1月時点でもまだ$1,500 (-$7,500 + $6,000) の超過拠出状態となり、毎月$15 ($1,500 × 1%) のペナルティが発生します。フランシンさんは2019年も一切引き出しをすることはなかったので、丸一年12ヶ月分、$180 ($15 × 12ヶ月) のペナルティが発生し続けることとなりました。
  • 2020年
  • 2020年への繰り越し額が -(マイナス) $1,500。これは2020年1月時点で加わる2020年分の設定拠出限度額$6,000で晴れて相殺され、やっとペナルティがなくなります。フランシンさんの2020年の拠出限度額は-$1,500 + $6,000 = $4,500 となります。

いずれにしても以上三つの例は、基本的に年間の「拠出額」分をしっかり記録管理していれば避けられる類の例です。しかし、ペナルティー発生原因でむしろ最もよくあるのは、「引き出し額」分の計算を間違ったために起こるパターンです。
既に繰り返し述べている、
TFSAから引き出し (withdrawal) を行った場合、その年の拠出限度額はそのまま変わらず、翌年の拠出限度額に、引き出した分の額が加算される
というルールを十分に理解していなかったために、過剰拠出をしてしまった例を見てみましょう。
== 例4 ==
田中さんは30歳のカナダ在住の女性。
  • 2009年にTFSA口座を開設し、それ以来2009年から2019年まで、各年1月になると同時に設定限度額いっぱいまでTFSAに拠出
  • 2020年1月、例年通り2020年の設定限度額である$6,000を拠出
  • 2020年3月、車購入の頭金としてTFSAから資金を調達することを決め、$5,000をTFSA口座から引き出し
  • 同年6月、ボーナス収入が$7,000ほど入ったため、そこからの一部をTFSAに拠出しようと考えました。3月に$5,000を引き出したので、その分拠出限度額に空きができているはずだと考え、ボーナス収入の内の$5,000をTFSAに拠出してしまいました
  • 2021年1月、例年通り2021年の設定限度額である$6,000を拠出
ペナルティ
  • 2020年1月に$6,000を拠出した時点で、2020年の拠出はすでに限度額に達しています。3月に$5,000を引き出ししましたが、この引き出し分が限度額に追加されるのは翌年2021年分。2020年内にいくら引き出しを行ったとしても、2020年の限度額には一切影響を与えません。したがって、6月に$5,000を拠出した時点で、2020年の拠出合計が$11,000 ($6,000 + $5,000) となり、そのまま$5,000の超過拠出。$5,000 x 1% = $50 のペナルティが6月から12月までの7ヶ月分で、合計$350となります。
  • 2021年への繰り越し額が -(マイナス) $5,000。ただし2020年に引き出した分$5,000が2021年分の限度額に追加されて、結果2021年開始時点の拠出限度額は、$6,000 - $5,000 + $5,000 = $6,000となります。田中さんは、2021年設定限度額のまま限度額が$6,000になっていると信じているかもしれませんが、実際はそうではなく、ここでは2020年の超過拠出額と引き出し額がたまたま$5,000で一緒だったために、結果2021年設定限度額と同額になったというだけのハナシ。2021年開始時点からペナルティは発生しませんが、2020年分のペナルティはしっかり発生してしまっています。

このように、ペナルティが発生する理由や状況は様々。過剰拠出をしてしまったことに気づいていればある程度の覚悟はできますが、自身の計算間違いに長い間気づかずに、突然多額のペナルティ通知が来てしまうケースは、なんとしても避けたいところです。
前述したとおり、各種金融機関がTFSAの拠出額をモニターして超過拠出を通知してくれるようなことは一切ありません。拠出額、引き出し額をしっかり自己で管理記録するようにしましょう。万が一過剰拠出をしてしまった場合には、一日でも早く必要な額を引き出し、複数月にまたがるペナルティを避けることを心がけましょう。