リタイア後の収入
RRSP (Registered Retirement Savings Plan) の制度を利用し、毎年のタックスファイリング時の控除利用と、非課税での運用という点を最大限に活用しながら長年に渡ってリタイアメント資金を育ててきたとしましょう。年齢も重ね、ある時点 (一般的には65歳) においてリタイア (引退、または定年) を考えることでしょう。その時点から、長年に渡って貯めてきたリタイアメント資金から今度は「引き出し」を開始し、それを日々の収入とする生活が始まります。
この時点からは、「自分の資産から自分の収入 (生活費) を捻出する」という図式となるため、その「引き出し」をどの様に行うか、どの様な制度を利用してどう効率よくやりくりするか..、というのは大きなテーマとなります。
- 十分な生活資金となる額を、
- 節税をしながら、
- 資金が尽きないように、
- 自分がいつ亡くなるかはわからないという条件の中で
これらの目標を達成するために、どの様な制度があり、どの様に利用するのが良いのか、まとめてみましょう。
リタイア後の収入に向けた制度/商品
RRSPの資金を「リタイア後の収入源」とする場合、一般的には主に以下の2つのオプションがあります。- Registered Retirement Income Fund (RRIF)
- Annuity
RRIF (通称「リフ」) は、TFSA/RRSP/RESP/FHSA等と同じ様にいわゆるRegistered Accountの一つ。つまり政府が管轄する制度/システムであり、その制度/システムの名称のこと。
Annuity (アニュイティ) とは、一般名詞としての「年金 (個人年金保険)」を意味する言葉で、金融機関や保険会社が提供する商品の種類の一つのこと。
..と理解しましょう。
RRSPの資金の引き出しを始めるとした時点から、その資金をこれらのオプションに「変換」または「購入」し、それぞれのルールと中長期的計画に基づき資金の引き出し/取り崩しを行いリタイア後の収入源とする、という考え方です。
重要:
個々の事情によっては、3つ目のオプションとして..というケースを考慮することもあるでしょう。様々な理由により、リタイア後の中長期的な収入源としての活用ではなく、やむを得ずRRSPから直接、短期的に一括または分割で引き出しを行わなければいけない状況になることもあるでしょう。そうなった時点でこれはいわゆる一般的な効率的な「リタイアメントプランニング」を外れるケースと考えられます。「効率的な制度/商品の利用」を優先する視点、また「節税」という観点から言えば、この3つ目のオプションはできる限り避けられるべきであると言えるでしょう。
- RRSPからそのまま引き出す
重要:
RRSP口座は71歳を超えて保持することは出来ません。71歳の誕生日を迎えるその年の終わりまでに、上記2つのオプションへの変換/購入か、または完全な引き出しを行い、RRSP口座そのものは閉鎖する必要があります。
ちなみにもちろん、RRSPの資金全てをどれか一つのオプションのみに使わなければいけないということではありません。例えば、早急に必要な資金のためにまずRRSPから直接少額を引き出し、残りの内半分をRRIFへの変換へ、別の半分をAnnuityの購入へ、..といった具合にやりくりすることも当然出来ます。ルールはあくまで、71歳の年の終わりまでにすべてのRRSP資金をそれ以外のオプションに振り分け、RRSPそのものは閉鎖する必要があるということ。
引き出し分への課税
上記2つのオプションの詳細を見ていく前に、大前提となる根本的な税金への理解をおさらいしておきましょう。どちらのオプションを利用するかに関わらず、元の資金がRRSPから変換された資金である限り、収入として引き出される資金は単純に「所得」であり、課税対象となります。
RRSPの利点であった「タックスファイリング時の控除」と「運用益が非課税」という2点をたっぷりと活用し、人によっては何十年とかけて今まで「税引き前の資金を、非課税で」運用し増やしてきました。晴れて引き出す時点となり、その引き出し額が (ある意味では当然のごとく、ここで初めて) 課税対象となるわけです。
しかしながら、ここでの引き出しによる所得は、働いている間に得ていたいわゆる給与所得よりは少ない額となるであろうという想定 (少ない所得であるから、それにかかる所得税の額も結果的に少ない) に基づき、ここで晴れてRRSPの3つ目の利点である「所得税の先延ばし」が発揮されるわけです。
これらの理解を踏襲しつつ、引き続き節税を意識しながら「引き出し」を行うことが重要です。RRIFとAnnuity、2つのオプションそれぞれに利点や特徴がありますが、節税という観点も含め、自分に合った選択をすることを心がけましょう。