カナダでの投資: TFSA: ケーススタディ2
ケーススタディ2 - 上手な消費家、Bさんの場合
普段から積極的に貯蓄をしてきたBさんは、2009年TFSA開始の一報を聞くと共に早速最大限に利用。毎年限度額までしっかり拠出することを目標にしつつ、大きな買い物の際にはTFSAから資金を調達。引き出しによる限度額の変化をしっかり理解しながら、毎年目一杯拠出することを心がけています。
- 既にある程度の貯蓄があったBさんは、制度開始の2009年、1月に即一括で$5,000を拠出。その後も、年始と共に一括で拠出出来るよう、TFSA用資金の貯蓄を一年かけて普通のSaving Accountで行っています。
- Bさんの投資先は、半分が年利率1.5%のTax-Free Saving Account、残りの半分がおよそ4%の運用益が期待できるTax-Free Mutual Fund (投資信託) 商品。共に銀行が提供している商品なので、資金の移し変えなどもスムーズに行えます。
- 2011年、車を買い替えることを決意したBさんは、購入費用の頭金$4,000をTFSAから捻出しました。
- 2013年、今度は夏季休暇の旅行の為に奮発。$3,000をTFSAから捻出しました。
- 引き出しの際は常にTax-Free Saving Accountの方から引き出しをしますが、その後Tax-Free Saving AccountとTax-Free Mutual Fundの元金バランスが常に1対1になるように調整を行っています。つまり、Tax-Free Saving Accountの残高が減った時に、Tax-Free Mutual Fundの一部を売ってTax-Free Saving Accountに移し変えるという調整を行っています。
2009年1月から上の条件で拠出をはじめたBさんのその後は、以下の表の通り
(2014年年始時点まで)
| 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 |
① | 設定拠出限度額 | $5,000 | $5,000 | $5,000 | $5,000 | $5,500 | $5,500 |
② | 前年未使用分の繰越し額 (前年の⑥) | - | $0 | $0 | $0 | $0 | $0 |
③ | 前年引き出し額 (前年の⑦) | - | $0 | $0 | $4,000 | $0 | $3,000 |
④ | 合計拠出限度額 (①+②+③) | $5,000 | $5,000 | $5,000 | $9,000 | $5,500 | $8,500 |
⑤ | 拠出額 | $5,000 | $5,000 | $5,000 | $9,000 | $5,500 | |
⑥ | 未使用拠出額 (④-⑤) | $0 | $0 | $0 | $0 | $0 | |
⑦ | 引き出し額 | $0 | $0 | $4,000 | $0 | $3,000 | |
2009年
- 設定拠出限度額$5,000まで目一杯拠出。翌年への未使用分繰越しも引き出しも無し。
2010年
- 設定拠出限度額$5,000まで目一杯拠出。翌年への未使用分繰越しも引き出しも無し。
2011年
- 設定拠出限度額$5,000まで目一杯拠出。翌年への未使用分繰越しは無し。ただし$4,000の引き出しを行ったため、その分が翌年の限度額に上乗せ。
注意: 引き出し額がその年の限度額に影響を与えることはありません。2011年の限度額はあくまで$5,000のままで、2012年の限度額が$9,000になります。
- また、引き出しによりTax-Free Saving Account分が目減りしたので、Tax-Free Mutual Fundを$2,000分売って、Tax-Free Saving Account分に移行する調整を行う。
注意: 既にTFSAの「箱」に入っている資金の運用先を、Tax-Free Mutual FundからTax-Free Saving Accountに移しただけなので、この場合は「引き出し」または「拠出」とは扱われません。したがって限度額計算にも一切影響を与えません。
2012年
- 前年引き出し分$4,000と新規分$5,000を含めて、限度額は$9,000。資金にまだ余裕のあったBさんは、引き続き目一杯拠出で、翌年への未使用分繰越しも引き出しも無し。
2013年
- 設定拠出限度額$5,500まで目一杯拠出。翌年への未使用分繰越しは無し。ただし$3,000の引き出しを行ったため、その分が翌年の限度額に上乗せ。
- また、2011年同様Tax-Free Saving AccountとTax-Free Mutual Fund間の調整を行ったが、同様に限度額計算に影響は無し。
2014年
- 前年引き出し分$3,000と新規分$5,500を含めて、限度額は$8,500。
考察
常に迅速かつ限度額目一杯の拠出を心がけるBさんは、長期資産運用の基本ファクターである「時間」というものを、有効に活用していると言えるでしょう。引き出し分を差し引いた3年間の拠出合計は$22,500。3年間の運用益は概算でおよそ$2,088にもなり、これが丸々非課税になっているというのは非常に大きな利益と言えるでしょう。
毎年1月になると同時に限度額目一杯を一度に拠出するというのは、拠出する資金に余裕があるのであれば有効といえるでしょう。ただし、大きな支出をTFSAからの引き出しから捻出することもあるBさんの場合は、今後毎年必ず年初めにその拠出資金があるとは限りません。いずれは、月毎の入金で一年丸々かけてその年の限度額までを拠出する、というスタイルに移行することは十分に予想されます。
貯金をする行為そのもの、または限度額まで拠出することそれ自体が本来の目的ではありません。資産を増やし、急な支出にも対応できるだけのやりくりをすることが、本来の目的であるべきです。その意味では、車購入や旅行資金などの大きな支出を全てTFSAで賄うことが出来ているBさんは、上手な消費家と言えるでしょう。