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カナダ生活: 日本-カナダ間 現金の持ち込み

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

近年、オンラインを中心に様々な「海外送金」サービスが溢れ、利用する側としては選択肢が広がってとても良いことだと思います。ただ、例えばワーキングホリデー/留学/移住等により、ゼロから新しくカナダ生活を始める際、あるいは日本の親族からの贈与を受け取った際など、ある程度の大きな額をカナダに直接持ち込みたいといった機会もまだまだあることでしょう。
本項では、現金/小切手/手形/有価証券等を、カナダに持ち込む際のルールについてまとめてみましょう。

カナダに現金を持ち込む際のルール

根本的なルールはいたって簡単です。
  • カナダドル $10,000 以上に相当する現金または小切手/手形/有価証券等をカナダに持ち込もうとする場合は、入国の際に申告する必要がある。
重要:
『$10,000 以上の現金は持ち込めない』、『...持ち込むことが禁止されている』、『...税金が引かれる』といった文言を見かけることがありますが、どれも正確ではありません。 金額そのものに関して言えば、上限は一切ありませんし、どれだけ多くの額であっても一切違法ではありません。また、持ち込む金銭そのものに対して直接税金が徴収されるようなこともありません。
繰り返しますが、ルールはただひとつ。「$10,000 を超える現金または小切手/手形/有価証券等を持参してカナダ国境をまたぐ際には、申告しなければいけない」ただそれだけのことです。

選択1: 申告しなくてよい額に抑える

手続きが面倒だという理由でただ申告を避けたいのであれば、単純にカナダドル $10,000 以上に相当する分の持ち込みをしなければよい (カナダドル $10,000 以下に抑えればよい) だけです。
入国時に行うキオスク端末による質疑において (以前は、機内で記入する「Declaration Card」において) 、「カナダドル $10,000 以上の現金及び通貨相当物を持ち込もうとしていない」ことを宣誓し、そのまま申告無しで入国します。

重要:
バンクーバーやトロント等の主要空港到着便をはじめ、近年は空港でのキオスク端末 (BorderExpress) による入国手続きの効率化が進み、機内でのフォーム(E311)記入作業は順次廃止されています。今後さらに様々な効率化が図られ、よりスムーズな入国審査/手続きへと発展していくことが予想されます。ただし、現金持ち込みそのものに関するルールには変化はありません。どのような形式であれ「カナダドル $10,000 以上の現金及び通貨相当物を持ち込もうとしていますか?」という質疑は必ず存在します。その質問に対し「No」と答え、手順を進めます。
ただし注意しなければいけないのは、ここで「現金に相当するもの」として扱われるものには、日本円を含む外国の通貨、株式、債券、手形、小切手等々が全て含まれます。「日本円で持ち込むから関係ない..」、「小切手に変えてきたから問題ない..」といった例外はありません。全ての種類の通貨相当物 (monetary instruments) をカナダドルに換算して、それがカナダドル $10,000 以上となるのであれば、申告をする必要があります。

選択2: $10,000 以上を、申告せずに持ち込む

「申告をしなくても特に質問もされず入国できた..」といった事例は当然のごとくあります。「よほど挙動や言動が疑わしくない限り質問されることはない..」というのもある程度現実でしょう。しかし、これはれっきとした違法行為です
申告をせずに $10,000 以上を持ち込もうとした事が発覚した場合、税関/入国を管理する Canada Border Services Agency (CBSA) は、持ち込もうとした全ての通貨相当物を押収する権限があります。また、通貨相当物が犯罪行為等に関わるものだと疑われた場合には、押収物は返還されません。あるいは犯罪行為等に関わるものでないと承認され返還される場合でも、最大 $5,000 の罰金が発生します。
せっかくのワーキングホリデーの門出、あるいは里帰り休暇の後、いきなり空港で捕まるようなリスクを冒す理由はありません。$10,000 以下なら申告無し、$10,000 以上なら申告。ただこれだけのルールを守るだけのことです。間違った選択をしないようにしましょう。

選択3: $10,000 以上を、申告し持ち込む

申告、申告..と、大掛かりな手続きの様に聞こえますが、申告はそれほど面倒な手続きじゃない!ということをここで強調しておきましょう。

日本出国時
  1. まず、カナダ入国を考える前に、日本出国における日本の税関のルールがあることを忘れてはいけません。日本出国のルールは「100万円相当額の現金等を持ち出す場合は、申告する必要がある」ということ。 >> 日本国税関: 出国時の税関手続
    つまりここでは、カナダドル $10,000 相当ではなく、日本円100万円相当額が基準になります。日本円現金やカナダドル現金、さらにその他の通貨相当物を含めた全ての合計を日本円換算し、それが日本円100万円を超えるのであれば、日本国税関に対して申告する必要があります。
  2. 成田でも羽田でも関空でも、国際線発着のある空港には必ずセキュリティゲートの後に税関のカウンターがあります。申告を行う場合はこのカウンターに立ち寄り、「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を記入し提出します。申告書は、住所・氏名やパスポート情報、そして通貨相当物の構成と合計額を記入し署名をするだけの簡単なもので、1分もあれば手続きは完了します。
カナダ入国時
  1. 入国時に行うキオスク端末による質疑において、「カナダドル $10,000 以上の現金及び通貨相当物を持ち込もうとしている」ことを宣誓します。

    重要:
    上記のケース同様、入国審査/手続きは今後より効率化が進むことでしょう。ただし、現金持ち込みそのものに関するルールには変化はありません。どのような形式であれ「カナダドル $10,000 以上の現金及び通貨相当物を持ち込もうとしていますか?」という質疑は必ず存在します。その質問に対し「Yes」と答え、手順を進めます。
    注意:
    カナダ/アメリカ入国をスムーズにする NEXUS プログラムに加入し、NEXUS カード保持している場合、通常であれば NEXUS カード保持者専用の列からスムーズに入国することができます。ただし、$10,000 以上の現金及び通貨相当物の持ち込みの申告手続きをする場合は、NEXUS カード保持者であっても、通常の入国手続き列に並び申告手続きを行う必要があります。これは、NEXUS および CBSA のサイトに厳格に明記されています。
  2. カナダでの入国審査において「キオスク端末からのアウトプット用紙」(または「Declaration Card」) の内容を確認した審査官は、到着ゲートへと出る前にある、「Cross-Border Currency or Monetary Instruments Report」を記入/提出するカウンター/部署に寄るように指示を出します。
  3. 担当のカウンター/部署に於いて、「Cross-Border Currency or Monetary Instruments Report」を記入/提出します。このレポートも同様に、住所・氏名や渡航便情報、そして通貨相当物の構成と合計額等を記入し署名をするだけのもので、3分もあれば手続きは完了します。
  4. レポート提出の控えとともに Declaration Card またはキオスク端末からのアウトプット用紙も提出し、入国となります。
これだけの手続きで、$10,000 以上の通貨相当物を適切に正規の方法でカナダに持ち込むことができます。一度経験してしまえば、それまで $10,000 以内に抑えようとしていた過去の努力が馬鹿らしく思えるほど、簡単な手続きです。

まとめ

なぜ申告する必要があるのか
入国管理/税関側の目的は、二国間での通貨の移動が、犯罪やテロに関わるマネーロンダリングに利用されていないかをチェックすること (または、チェックすることができるように記録に残しておくこと)、ほぼその一点であるといって過言ではありません。したがって、その一点においてやましい事がないのであれば、どれだけの大金であれ臆することなく正規の申告手続きを踏めば良いだけのことです。
逆に言うと、例えば日本側での税関手続きを怠って、カナダ側だけで申告を行ってしまった場合などは、マネーロンダリングのチェックという視点においては非常に怪しい状態となってしまいます。二国間においてしっかりと正規の申告を行うよう心がけましょう。

パーソナルファイナンス視点からの注意点
例えば日本の親族からの贈与で一千万円相当の現金を受け取りカナダに持ち込むとしましょう。正規の申告を行いカナダに持ち込むこと自体には何の問題もありません。その現金をカナダドルに換金しカナダの銀行に入金し、その後例えば住宅購入の資金に利用したとしましょう。その場合、CRA側がその資金の出所に興味を示すことは容易に想像できます。
例えば...
  • 海外に $100,000 以上の資産がある場合、Foreign property のひとつとして申告してある必要があるが、タックスファイリング時に正しく申告してあるか..
といったチェックを元に、辻褄が合わなければタックスファイリング時にAuditが入ることも考えられます。
マネーロンダリングの場合と同じく、特にやましい点がないのであれば何も臆することはありません。ただし念のため、例えば日本の銀行からその現金を引き出した際の明細書や、あるいはその資金の日本での履歴を参照できる書類等、何らかの関連書類を手元に控えておき、準備しておくよう心がけましょう。